桜 | ミックスココアのひとりごと

ミックスココアのひとりごと

気ままに思いついたことを折々に

敷島のやまと心を

人 問わば

朝日に匂う

山ざくらばな

(本居宣長)


この歌に限らず

桜を詠んだ詩や歌は多いですね。


ただ単に美しいだけなら

牡丹の方が勝るかもしれません。

優雅なだけなら

百合の花に及ばないかもしれません。


にもかかわらず

これほど日本人の精神文化に

深く根ざして

心象風景の中に見事に溶け込んだ花は

他にはないでしょう。


「やまと心」とは、

日本人の精神文化を表し

その象徴を

「山ざくらばな」に例えたものなのでしょう。


厳しい冬の寒さがようやく緩み

緑が生え

稲作を始めるこの時期に咲くため

暦のしっかりとしない時代に

桜の開花を

農業開始の指標とし

暦代わりとなり

また稲作神事では

桜に穀物の神が宿るとされていました。


平安時代以降は

桜が花の代名詞ともなり

とりわけ春の花の中でも

特別な位置を占めていました。


農耕民族である日本人に

最も身近なこの桜は

法的に定められてはいませんが

国を代表する花の一つであることに変わりはなく

明治時代以降は

学校や警察や自衛隊など

さまざまな組織・団体で

紋章として使用されてきていることをみても

最もなじみの深い花であることがわかります。


日本の年度が

四月始まりであること

多くの学校の校庭に

桜の木が植えられていることも

入学・卒業などの

人生の節目を彩る思い出の中の

シンボルとなってきた理由の一つなのでしょう


この日本人の精神文化の

象徴でもある桜について

すでに江戸時代には

「花は桜木、人は武士」という

言葉と共に

「花」=「さくら」のイメージが

定着していました。


ぱっと咲いて

そして一夜の風雨と共に散ってゆく

桜の「はかなさ」や「いさぎよさ」が好まれ

諸行無常の感覚に例えて

はかない人生を投影する対象となり

本居宣長のこの歌に詠まれたテーマが

「もののあはれ」を基調とする

日本人の精神の具体的な例と

見なされているのではないでしょうか


「いさぎよさ」を人の模範とし

武士道のたとえにもされてきました。


明治時代に新渡戸稲造が著した

「武士道」では

「武士道とは日本の象徴たる

桜の花のようなもの」と記しています。


咲いているさまの美しさはもちろん

葉が出そろう前に花を咲かす

その生命力の強さにもひかれ

さらに、咲いてから散るまでの

移ろいゆくはかないさまに人生を投影し

咲き終えた後の潔い

散りざまを

美しいと感じる感性を

多くの日本人が持っているのです


桜の花を愛する心を

大切に守り伝えてゆきたいものです。