ふるさと | ミックスココアのひとりごと

ミックスココアのひとりごと

気ままに思いついたことを折々に

3月11日、昨日、一日

鎮魂を願い祈り続けて

何度も頭の中をよぎった詞がありました


汚れちまった悲しみに

今日も小雪の降りかかる

汚れちまった悲しみに

今日も風さえ吹きすぎる…

(中原中也:詩)


ふるさとの山に向ひて
言ふことなし
ふるさとの山はありがたきかな

(石川啄木:歌)


ふるさとの

訛りなつかしき

停車場の
人ごみの中

そを聴きに行く

(石川啄木:歌)



私は民間企業に勤める

平凡なサラリーマンですが

今、「思うところ」があって

神職(神主)の資格を得るために

通信教育で勉強をしております。



もう約2年も前になりますが、

生まれ育った故郷の村の

一斉清掃日に

草取り・溝掃除のお手伝いに行きました。


色んな場所を手分けして

村の人々が清掃活動をするのですが

私の受け持ちは

村の神社の境内の掃除でした。


溝に溜まった泥を取り除き

境内を竹箒で掃いておりました。


この神社の境内は、

私が少年時代に

毎日、日が暮れるまで

よく遊んだ懐かしい

思い出の場所です。


夏の盆踊り、

収穫感謝の秋祭り

そして初詣…


四季折々に神社の境内の風景が

懐かしい記憶と共に

鮮明に浮かんできます。


この神社の境内の

清掃活動の合間の休憩時間に

村の人が話してくれたのです。


この神社に

事あるごとに遠方から

来ていただいていた宮司さんが

高齢のためにもう来れない、

つまり、祭祀を執り行う神主さん不在の

神社になってしまうというお話でした。


「誰か神主さん来てくれないだろうか…」

村の自治会の役員さんも

そんな風に思っておられることがわかりました。


神社で祭祀を執り行う宮司が不在となれば

それは、もはや神社ではなく

ただの古い建物でしかないのです。


その土地の産土神(うぶすながみ)、

守り神を祀り守らねば…、

この神社は、私の故郷の心の原風景そのもの、

ただいたずらに荒廃して朽ち果てていくのを

黙って見ているわけにはいかない…


それは故郷を失うのと同じこと、

そんな思いが沸々と込み上げてきたのです。


迷いました、悩みました、

けど、私は

自分の故郷を失いたくなかったのです…

誰も来てくださる神主さんがいないのなら

それなら私自身が宮司になろう、

そう決心したのが、

約1年前の春のことだったのです。


そして神職の資格を取得する方法を探し調べ

受験申し込みをして

受講が認められた、

まさにその年の春、

3月11日に、

東北大震災が発生したのです。


私が故郷の神社と共に守りたいと思った

その同じ故郷を

大勢の方々が津波と共に

一瞬のうちに失ってしまった…



♪兎追ひし かの山
小鮒(こぶな)釣りし かの川
夢は今も めぐりて
忘れがたき 故郷(ふるさと)…


♪雨に風に つけても
思ひ出(い)づる 故郷


♪山は青き 故郷
水は清き 故郷…



いつの日にか帰らん…と、

その思いを抱きながらも

1年経ってもそれを果たせない、

34万3,935人もの人々…

そのやるせない切ない思い…


故郷の復興を阻み、

帰郷を妨げるものは、

それは、例えば、

106年分にも相当するといわれる

瓦礫の山、

そして、その瓦礫の処理の

受け入れを拒む拒否反応…


何の羞恥心もなく

「絆」という言葉を

口にする事ができますか…



汚れちまった哀しみに

今日も小雪の降りかかる…