今ここにいる私は空っぽだ。
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今日のお昼も母と一緒に食べようと、会社のお昼休みに母の病室へ行く。
母は、ボーッと天井を見つめるだけ。新しい事と言えば、鼻に酸素吸入器が差し込まれていた。
スープジャーで持ってきたカレースープ(先日私が作ったカレーをダシで伸ばした)を、スプーンで口まで運んでやる。
私が作ったんだけど、味どうよ
母はニコニコしながら「美味しいよ」と言った。
いやいや、まだあなたには敵いませんよ
母は栄養剤の点滴をしている。本人は「治療のために、お薬を点滴してもらっている」と信じ込んでいる。
おっと、治療中でしたか
頑張ってるね
そう言いながら母の頬を撫でると、
早く退院して、みんなにお礼しに行かなくちゃ
と笑顔で応えた。
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母のベッドには、看護師さんとの連絡用のホワイトボードが下がっている。そこに
オムツ・尿漏れパットをご用意ください
と書いてあった。先日かわいい刺繍の入ったパンツを購入し、母も喜んでいたのに。
しかも私は未婚だ。子供はいない。人生初のオムツ購入が、母のものとなった。
地域包括支援センターに連絡すると、私の住む市ではオムツの助成金が受けられるとの事。介護保険とは異なるため、本来なら家族が市役所に出向き手続きを行う必要があるのだが、地域包括支援センターの方で動いてくれるそうだ。有難い。
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私は明日から1週間、会社のご好意で有休を取る。もしかしたら、このまま忌引休暇に突入するかもしれない。
慌しく業務引き継ぎを行う。こんな時のため用意しておいた訳ではないが、業務マニュアルを作っておいて良かった。仕事を引き受けてくれたみんな、有難う。
ちゅうか、そんなに私、みんなが大騒ぎする様な重要な仕事を持ってましたっけ。
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今私は何も出来ず、事務所〜屋上〜トイレを行き来している。正確には何も出来ないのではなく、何も考えられないのだ。
会社としては、さっさと早く帰ってほしいだろう。申し訳ありません。
しかしここで早退して母の顔を見に行くと「何かあったの?」心配されてしまう。早退しても、終業時間までどこかで時間を潰せばいいだけの事なのだが。
空っぽにの私は、夏空を見つめる。