前に書いたマボロシの猫「マリちゃん」。
妹は、何回も会ったのに、私はなかなか会えないので「マボロシの猫」じゃないの?
と思いながら、その子のお宅の前を何回も通った。
何回も通っているうちに、そのお宅に植えてある花々も眺めるようになった。
そして、そのお宅の人は紅い花がお好きなんだな、と気が付いた。
腰の辺りくらいの塀の内側で、冬の初めには赤い山茶花がたくさん咲いていた。
今は、2階まで届きそうに伸びた紅いバラが咲いている。
とても珍しい色だと思う。
この奥に、臙脂に近い深い紅色のバラが咲いている。
それぞれ違う赤のバラが大きな花を咲かせているので見ごたえがある。
塀の上には、細長い植木鉢が置いてあり、そこにはデージーのような、濃いピンクの花が長い間咲いている。
この家は相当古い感じ。
その古さと紅い花たちがしっくり溶け合っている。
もしもピカピカに新しい家に、これだけ紅い花を植えたら、賑やか過ぎて落ち着かないだろう。
家も草木も、長い時間をかけてお互いに混じりあっていったような感じだ。
このお宅の近くで、見事なクレマチスの花を見かける。
道に面した低いフェンスに、毎年初夏になると蔓が伸びてきて、やがて大きな紫色の花が咲く。
大きめの朝顔に花びらの切り込みを入れたような、キリッとした花。
一週間ほど前に通りかかったら、ちょうど花が開いたところだった。
明るい紫の花は、新緑の季節にふさわしい。
毎年それなりに手入れをしなければ、こんな花は見られないだろうな。
どんな人がお住まいなのか・・・と思っていた。
さっき通りかかったら、さっぱりした浴衣地のワンピースを着たお婆さんが、庭の掃除をしていた。
きっとこの人が、あのクレマチスを咲かせているんだ!
白に紺色の涼しげな柄のワンピースと蒼いクレマチスがピッタリ合った瞬間でした。
ミッドタウンの柏葉紫陽花。
この花が白く咲き出すと、梅雨がやってくる。