初夏になると思い出す。小川さんちの夏みかんのこと。
少し前まで、うちの会社に小川さんという、限りなくお爺さんに近いおじさんがいた。
先祖代々のお住まいは横須賀。
その家に立派な夏みかんの木があった。
小川さんは若い頃から山歩きや土仕事など外にいるのが好きな人。
夏みかんの木も、一年を通して肥料をやったり、剪定をしたりと丹精込めて面倒をみているらしい。
とても大きな木で、近所の人が道を教えるときの目印になってるとか。
毎年初夏になると、その木になった夏みかんを会社に持ってきてくれた。
必ず、一人に2個ずつ。
マーマレードにするといいよ、というアドバイスも。
せっかく頂いたんだから・・・とあちこちレシピをひっくり返し、ズボラな私でもできそうな一番簡単そうな方法でマーマレードを作ってみた。
まず最初にグレープフルーツみたいに半分に切って、果汁を絞り出す。
果肉もできるだけ取り出す。
皮の裏側にある白い部分をなるべく取り除く。
(ここが苦いので)
皮を細かく刻んで水に漬け、できることなら一晩置く。
(水に漬けることで苦味がかなりとれる。)
水に漬けるというのは何の変哲も無いことのようだが、時々水を替えながら一晩置くというのは、時間がかかる、ということ。
だから翌日に特別な予定がない日に作らないとね。
翌日、水から上げた皮は、ザルで水を切ってから鍋の中へ。
昨日採っておいた果汁と果肉も入れ、砂糖(1個につき100gくらい)を入れて、あとは弱火で煮るだけ。
最初はサラサラだった煮汁が、だんだんトロ~リとなって、小さかった泡が大きくブクブクという感じになったら火を止めて冷ます。
好みだけど、私はゆるめのプリザーヴという感じが好き。
パンに塗るのももちろんだけど、ヨーグルトやアイスクリームにかけると、絶品ですわ。
マーマレード作りにハマっていたこの頃、とても不思議なんだけど・・・
あちこちから、夏みかんを頂いた。
友達、親戚、ご近所からも。
別に私が喋って歩いたわけじゃないけど、何故か夏みかんが集ま
ってきた。
だから「引き寄せの法則」って信じるかも。
ただし今まで引き寄せちゃったのは、夏みかんと猫だけだけど・・・
とにかくせっかく頂いた物だから無駄にしてはいけないと、週末には夏みかんの皮を剥いたり、刻んだり、煮詰めたり・・・
マーマレード屋さんを開こうか?っていうくらい作りましたね。
方々からガラス瓶を貰ってきて、それに詰めて今度は友人、知人、イトコハトコにも配って歩いた。
この時期色々なところから、夏みかんを頂いたけど、小川さんちの夏みかんが一番おいしかったと思う。皮が薄く、果汁も多くて甘い。
一年を通して手入れをしてくれた御礼に美味しい実をつけるのかしらん?
小川さんは毎年自分の家の近所にも、配っているらしい。
毎年頂くご近所さんは、その家々で好みのマーマレードを作り、出来上がると小川さんちに届ける。
水あめを入れて煮る家、蜂蜜を入れる家、と様々で、小川さんは毎年色々なマーマレードを堪能しているらしい。
小川さんちに夏みかんの木があることで、その近所一帯に「夏みかん文化」が生まれたのかな!?
小川さんが退職したので、もう夏みかんはもらえない。
不思議なもので、他のところからも、集まってこなくなった。
マーマレードブームは去ったらしい。
そのかわり、今は一年に一度か二度、イチゴのジャムを煮る。
イチゴの方がもっと簡単で、何もかも目分量で作っても、それなりに美味しい。
台所に甘酸っぱい香りが漂うと「春だなぁ~」と思う。
つまりダイエットの天敵だわ