前にも書いた通り、タケゾー(9歳のおじさん猫)は一ヶ月に一回、私が休みの土曜日に「ねこの病院」に診察、治療に行かねばならないんだけど・・・
どういうわけか、この日を察知して、食器棚の上の奥へ潜り込んでしまい、出てこない。
病院に行くって、どうして分かるんだろう?
感づかれないようにキャリーバッグはぎりぎりまで出さないし、予約の電話も家から掛けないようにしてるのに?
猫をたくさん飼っている人は、みんな同じような経験をしている。
猫は人の気持ちを読む、という。
ある日のこと。
私は自分の部屋で本を読んでいた。
ふと目を上げると隣の部屋にタケゾーがいる。
私に背中を向けて、のんびりと顔を洗っていた。
その背中を見て、ひらめいた。
猫が人の気持ちを読むというなら、ちょっと実験してみよう
私はタケゾーの背中を見ながら心の中で呼んでみた。
・・・・・・タケゾー、タケゾー、 タ、ケ、ゾー こっちにおいで~・・・
すると・・・
タケゾーの動きがピタッと止まった。
背中が固まっている。
じっと見ていると・・・
やがてクルッとこちらを向いた。
その顔を見て久しぶりに「ファッツ マイケル」という漫画を思い出した。
トラ猫マイケルが、困り果てたときに見せる、言葉にならない困り顔。
しかもタケゾーは「にゃん」と返事をして私のところへ歩いてきた。
そして「せっかく来たんだから、撫でれ~」
とゴロニャン状態なのだ。
これには結構驚いた。
タケゾーは耳で聞いても、心の中で聞いても私の声は同じに聞こえるのか?
巷では「呼んで来るのは猫じゃない」といわれている。
猫という生き物は、呼ばれても気が向かなければ知らん顔、気ままな生き物だという意味。
そういう意味ではタケゾーは猫じゃない。何しろ人が大好きなので、呼ばれると嬉しくて無視なんてできないらしい。
犬のような猫なのだ。
そういえば、こんなことがあった。
大分前に、みんなに私の分身といわれた猫がいた。
名前はエリザベス!センスが問われる名前だけど・・・
うちに来た頃、クラクラするほどの美少女だったので戯れに呼んでいるうちに定着してしまった。その後は名前にふさわしい気品と迫力で、毎日「女王様とお呼び!」と私をこき使うようになった。
晩年に悪性腫瘍が見つかり、1週間に一度は注射に通っていたが、それでもそろそろカウントダウンかな?という時のこと。
深夜、私が本を読んでいる横にエリザベスが座っていた。
いつもと同じ、静かな時間。
本から目を上げてエリザベスを見た私は、自分でも驚くほど唐突に、心の中でエリザベスに
「もうちょっと、一緒にいようよ」と話かけていた。
すると間髪入れずに
「えっ?いいの?」という答えが返ってきた。もちろん心の中に。
エリザベスは私をじっと見て、それからピョンと椅子に飛び乗ってきた。
それからしばらくは、お医者さんが驚くほど元気になった。
今でも、そのときの会話が心に残っている。
人間とか猫とかの垣根を越えた、魂と魂の会話だったと思う。