昨年の夏のこと。
タケゾーがなんだか元気がなくなった。
同じ頃、友達の猫が腎臓の病気になった。
それを聞いたもう一人の友達が、症状を聞いて自分の猫にも当てはまる、と病院に連れていったところ、やはり同じ病気だった。
その症状とは・・・
突然吐く、口が臭い、よく水を飲む、頻尿、などなど。
タケゾーに当てはめてみると・・・
当てはまるような、そうでもないような?
とにかく久しぶりに「ねこの病院」に連れていった。
その結果、意外なことが判明した。
血液検査の結果、腎臓と肝臓は優等生の数値。
ただ血糖値がかなり高い。それなのに総コレステロールはかなり低い。
なんだ、こりゃ?
人間の場合、成人病の人は総コレステロールも高い。
遺伝的な要素も大きいが、やはり食事などに偏りがあるのだろう。
うちの猫には、好みのドライフードと数種類の缶詰を交互にあげている。
人間の食べ物は、ほとんどあげないし、猫たちも欲しがらない。
猫のご飯には、かなり気をつけているつもりだったのに、何で?
先生は「栄養に偏りがある」といったけど、この数字ってもしかして栄養失調ってことじゃないの?
ガ~ン
血糖値はかなり高いが、インシュリンを打つところまではいってないので、薬を使わず治療用のドライフードを食べさせることにした。
他にペースト状のサプリメント(メイちゃんにもあげて良い)と・・・
あとは、何を食べさせても良いから、色々食べて総コレステロールを上げるんだって。
何を食べても良いの?塩分のあるもの以外なら?
お肉の脂身でも?揚げ物でも?ケーキでも?
(もともとタケゾーは、そういうものは食べないんだけど)
「何を食べても良い」って、夢のような言葉にやや興奮気味・・・
自分が言われたわけじゃないのに。
いつも高カロリーのものは控えて、緑黄色野菜に、カルシウム、たんぱく質は、しっかり採って・・・と刷り込まれているので、この世に
「何を食べても良い」という言葉が存在してたってことが信じられない。
これはタケゾーのことで私のことじゃないんだから、と何回も自分に言い聞かせる!
皮肉なことにタケゾー本人は、別に何も食べたくないのだ。
それからは、月に一度は病院に行き、検査をしながら様子を見るということになった。
しかし、月に一度の通院というのが中々難しい!
というのも、タケゾーは、病院に行く日は気配を察して、食器棚の上の奥に隠れて出てこないのだ。
行く直前までキャリーバッグは出さないし、予約の電話も家では掛けない。
貴重な休みの土曜日の午前中・・・
食器棚の前に台を持っていって身を乗り出し、こういうときの為に買っておいたネズミの付いたおもちゃ(プラスチックの細長い棒の先に紐が付いていて、その先にネズミのおもちゃが付いている代物)をタケゾーの方へ突き出し、
「ほら、ほら、これ、なんだろうねえ?面白いねえ?こっちにきて一緒に遊ぼうよ?」
と猫なで声で話しかける。
いつもならタケゾーはお調子者なので、すぐに飛びついてくるのに、この日だけは、全然乗ってこない。
私は、さらに派手なパフォーマンスで、誘うように手をユラユラ振ったり、首をかしげたりしながら、大きな声で
「ほぉら~、ほらほら・・・ネズミちゃんだよ~」
と踊ってみせる。
タケゾーはネズミを見ていない。私の顔をじーっと見てる。
・・・・・虚しい・・・
時間がどんどん過ぎていく。
結局、予約の時間をオーバーしてしまい、その日はキャンセルする。
タケゾーにしてみれば、普段はろくに構ってくれないくせに、朝っぱらから作り笑いなんかして、おもちゃを振り回すなんて絶対へんだ!
「おかあたんの目は笑ってないし・・・こういうときは絶対出ていかにゃい」と思っているらしい。完全に読まれてる。
私もまだまだ人間が出来ていないってことだ。
タケゾーを病院に連れていく日は、無念無想、気配を消して忍者のごとく振舞わねば・・・
猫のためか、自分のためか、人生修行は果てしなく続いて行くようです・・・