昨日は昔話の恩返しについて書いてみました。
そういえば・・・と思い出したことがあります。
少し前にジブリの「猫の恩返し」という映画がありましたね。
ジブリファンとして、猫好きとして、とても楽しみにしてワクワクしながら見にいきました。
主人公の少女が猫の国の王子様を助けるところから話が始まるのですが・・・
王子様が助けてもらったお礼に持ってきてくれたのは、庭一面のネコジャラシや山のようなネズミの缶詰でした。
なるほどねえ・・・ありがちな話です。
その頃住んでいた家は、まわりに土の庭が多く、向かいのお屋敷にはケヤキの大木が並木道のように並んでいました。
そのお陰で、夏の早朝などは森の中にいるような爽やかな気分で目覚めることができました。
鳥もたくさんやってきて、いつもにぎやかな合唱を聞かせてくれました。
でもでもでも・・・・
人間にとって住みやすい環境ということは、他の生き物にとっても快適というであり・・・
私は、別に地球を独り占めするつもりはないけれど・・・
つまり・・・その・・・虫や爬虫類、両生類が苦手な私としては・・・
時々心の臓が止まるのではないかと思う事態が発生するのであります。
特に夏場は気が抜けない
なぜならたくさんの外猫たちが、「ほんの気持ちです」と律儀に「捕れたて、新鮮、活き造り」のお中元を産地直送で(本物のクロネコヤマト便)届けてくれるから。
梅雨が明けたと思ったら、もうトンボを捕ってきた子がいます。
そのときは、まだ気持ちに余裕があって、自分が俳句を作れたら、こんなときこそ
まず一句!と思いつつ、猫からそっと取り上げて空に放してあげました。
夏も終わりに近づくと、深夜、
ビ、ビビビ、ビビビビビ・・・
とけたたましいセミの鳴き声がグルグルとうちの周りを何回も走ります。
木から落ちた臨終間際のセミを、猫がくわえて嬉々としてうちの周りを走り回っているのです。しばしば家にも持ちこんで・・・
でも、セミは7年間も土の中にいて、わずか1週間ばかりの命なんだから、せめて最期くらいは静かに見守ってあげればいいのに(合掌)・・・とまだ余裕がある。
だけどヤモリを持ち込んできたときは・・・もう私にとっては恐竜と同じですから
ひぃぃぃぃ~~~
と声さえ出ないで卒倒寸前になる。
それを見て、持ってきた子は
「おかあたん、声も出ないほど喜んでる。頑張って、もっと捕ってこよーっと」
と張り切って出かけていく。もう、本当に、お気持ちだけで結構ですから
だから猫が何かくわえて家に入ってきたときは、全身にサッと緊張が走るのであります。
でも、たった一度だけ例外がありました。
「屋根に登ったチーちゃん」に登場したチーちゃんが・・・
いつもは半分開け放した風呂場の窓から出入りしているのに、その日は庭に面したガラス戸からひょっこり姿を現した、と思ったら口に何かくわえている
遠くから見ると、くわえているのは何やら茶色い大きなもの。
な、な、なに~?やだな~もう・・・
と、すでに私は泣きたい気分で逃げ腰
チーちゃんは、小さい体で大きな物をくわえている割に、いやにゆっくりと、もったいぶった様子でこちらへ進んでくる。身体的には無理があるけど、胸を張ってる感じ。
・・・・・ なんだ、なんだ?
チーちゃんは、私の前までくると、くわえていたものをポンと放り出した。
それは、なんと、カビの生えたフランスパンなのでした。
チーちゃんは私の顔をじっと見て、やや鼻の穴を膨らませ一仕事終えた誇らしさをにじませながら
「さあ、持ってきてあげたわよ」といいたげな様子だ。
「こ、これを私に?持ってきてくれたの?ああ・・どうも、ありがとうね。」
お礼の言葉を聴くとチーちゃんは
「いいのよ、ほんのついでだから、気にしないで」
といいたげに一瞥し、クルッと背中を向けて、出ていった。
そういえば夕べのご飯のとき
「缶詰も高いんだからね、買ってくるのも大変なんだから、えり好みしないで食べなさいよ」
なんて、いったような気がする。
チーちゃんは、ご飯を食べながらその言葉を聞いていたんだね。
家の横にあるゴミの集積場で、これを見つけたとき、
「私の好みじゃないけど、うちも色々大変そうだから、おかあたんのご飯の足しになるかも」
と持ってきてくれたんだろうか。
身体の小さいチーちゃんにとって、フランスパンをくわえて来る道のりは、結構長かったと思うけど。
チーちゃんが庭の奥に消えたのを確かめてから
「お気持ちだけ頂きますね」
と心の中でお礼をいって、そっとゴミ箱に捨てました。
これは、やっぱり「猫の恩返し」だったと思っています。
今年は冬も花を絶やさなかった