外猫がたくさんいた頃の話です。
餌代、病気の治療費、手術代など、費用はかさむばかり。
そこで友人家族と相談し、不用品を持ち寄ってフリマを開き、費用の足しにしようと思いついた。
知り合いにも協力を呼びかけたところ、思いがけず品物が続々と集まってきた。
お返しで頂いた物やバーゲンで衝動買いをした物など、新品なのに使わずに仕舞い込んである。捨てるのは気がひけるし、人にあげるわけにはいかない、というような品物が押入れやクローゼットの中で場所ふさぎをしている。
猫のためという大義名分もあることだし、と喜んで協力してくれた。
他にも、おまけで貰った物、子供が大きくなって使わなくなった玩具、絵本、生活雑貨、いらなくなったという洋服などなど・・・
本当に色々な物が集まってきた。
今まで見たことのない物もいっぱいあって、世の中にはまだまだ知らないことがあるもんだ、と友達と顔を見合わせることもしばしば。
商店街のイベントや、学校の夏祭り、社教館でのリサイクルフェアーなど、できるだけ地元で開催するものに参加した。
みんな仕事をしているので、先の予定は分からない。
でも、その辺が「類は友を呼ぶ」ってヤツで、
アバウトなゆるい感じで、続けていた。
フリマ前日は、カレンダーの裏白を切って値札を作ったり、洋服にアイロンをかけたり、とちょっと手間がかかる。
でも当日は子供の頃のお店屋さんごっこみたいで楽しかった。
フリマの醍醐味は値切り倒すことらしい。
この日の為に英気を養ってきたらしいおばちゃん、おばあちゃんとチョーチョーハッシやりあうのも、面白い。
こちらも英気を養ってきたから、ガップリ四つ。
寄付して頂いた品物だから、値段はいくらでも良いようなものだけど、おばちゃんたちは値切って買うというところに満足感を見出すらしいので、その辺を考慮して協力させていただきましたよ。
最後に、こちらが折れて「じゃあ・・・」と値引きしたときのおばちゃん達の勝ち誇った顔
ささやかで、つつましいけど面白い買い物ごっこだったなあ・・・
色々な物を寄付して頂いたけれど、中でも後々の語り草になるような物もあった。
新しモノ好きの友達家族が出してくれた「スシマシーン」
なんじゃ、こりゃ?
上の方に寿司メシを入れるところがあって、真ん中にハンドルが付いてる。
ハンドルをぐるぐる回すと、下から握り寿司っぽいご飯の塊が出てくるというもの。
こういう物を見つけると子供より先に欲しがる友達が勇んで購入したらしい。
(どこで売ってるんですかね?)
1回、お誕生会で活躍した後、こちらへ送り込まれてきた。
冷やかし半分に遊びにきた別の友人が面白がって買っていったから、世の中は広いのだ。
皆がカルチャーショックを受けた物もある。
知り合いのおばあちゃまが寄付して下さったベルトを見たとき皆、一瞬目が…になった。
腰を締める部分はハッとする(としかいいようのない)紫色の太いゴム。
バックルも微妙な藤色で、1点物なのか豪華なバラの花がぎっしり付いている。
・・・・きっとお高いものなのね・・・
カジュアルというか、お構いないというファッションオンリーの私たちからは想像もつかない品物。
どういうお洋服に合わせるんでしょうか?
宝塚の舞台衣装とか?
他の品物の間にそっと置いておいたら・・・
通りすがりのおばちゃまが目ざとく見つけて
「あらぁ~」と大きなお声!
さらに続けて
「素敵なベルトねぇ~、こういうの欲しかったの~、おいくら?」
そこにいた私たち、あっけにとられて、しばし無言・・・
ハッと気を取り直して
「い、いくらでも、お気の済むお値段で・・・」
その後フリマの話が出るたびに、このベルトの話が1回は出る。
人それぞれ好みは違うものなのだ。
寄付してくださったおばあちゃまが最初に気に入って買った、ということは、この広い世界にもう一人ぐらいは同じ趣味の人がいるものなのだ。
いや、一人だけとは限らない。もっと大勢いるかもしれない。
何事も自分のモノサシだけが正しい、というわけではないのですね。
さらにさらに・・・
私達が困惑した物があった。
友達のお爺様が外交官であらせられたとき、世界各国を回って集めたという民族衣装を着たお人形が段ボール箱に二つも届いた。
こういう人形のシリーズがあったのか、それとも一度に買ったのか。
とにかく凄い数
一つずつお国柄を現す凝った衣装や小道具を持っているのだが・・・
昔は愛らしい表情の可愛いお人形だっただろうに、
今は顔色も色あせて衣装の糊も剥がれかけ、うっかり持つと手や首が取れてしまう物もあった。
それでもせっかく頂いたのだから、と売り場の横に箱をおいた。
ところが気が付いたら、このお人形が結構売れていた。
どうやら、こういう人形のマニアがいるらしい。
へえええ・・・ 知らなかったねえ・・・
外猫のためにと始めたフリマだったけど、
人と物との交流をたくさん学んだ時期だった。
猫から倍返し、いや百倍くらい楽しい思い出のプレゼントを貰った。
このお話は、また今度・・・