少し前から、子育て支援のNPOに参加している。

このNPOは自治体と連携して、孤立しがちな若い母親の子育てに手を貸す、というのが主な活動。

核家族化が極限まで進んだ今ほど、子育てが母親だけに託されている時代はない、という。

少し前まで、お爺ちゃんお婆ちゃん、近所の口うるさいおばさん、なんかが家に出入りして、皆で自然に子供を育てていたのに。

マンションの一室に籠もってしまえば、自由で気ままなのは良いけれど、分からないことを聞く人や不安なことを相談する人もいない。

父親が出かけたあと、24時間、毎日子供と向き合うだけの生活はフラストレーションが大きい。

そこで、ほんの少しだけでも子供を預かって、お母さんが気分転換できるように、というのが主なコンセプトだ。

私は絵本が好きなので、子供たちに色々な本を読んであげたい。

どんな絵本にどんな表情を見せるのか知りたい、というのが参加の理由。

仕事があるので、休日などほんの少ししか参加できないけれど。


さて、短時間でも実際に保育の現場に入ってみると・・・・

私のささやかな思惑など、あっという間に吹っ飛んで・・・・

子供が私のセンセイです女の子男の子


男の子は、みんな自動車と電車が大好き!!

ようやくハイハイできるくらいの子が、目を輝かせてバスのおもちゃににじり寄っていくのには驚くばかり。

電車の絵本をめくりながら、「これは新幹線の〇〇系(私は全然分からない)」と教えてくれる子もいる。

一番人気の絵本は、なんとかレンジャー、とかいう合体もの。

固くて厚い段ボールのような本なのに、擦り切れてあちこちテープで補強してある。

この本の文章が難解で、どこまでが人の名前で、どこからどこまでが一区切りなのか、皆目分からない。

読んでいても自信がないので、声が震える。つっかえる。

意味が分かってないので、変なところで切ったり繋げたりしてると思う。


それでも辛抱強い子は、じっと我慢して聞いてくれる。

若くして、すでに忍耐こそが人生の要と悟っているのだろうか。

偉い子だ。


でも、ほとんどの子は

「もう、いい!」

プイッと横を向いてどこかへ行ってしまう。

そりゃ、そうだよねあせるあせる


女の子の方は、いつか来た道だから、もう少し様子が分かる。

遊びも、パズルや塗り絵など色々に分かれるけれど

一番人気があるのはやっぱり「お母さんごっこ」


小さなエプロンを付けて人形を背負う。

自分は「おんぶ」なんてされたことがないだろうに、古典的なお母さんスタイルは定番にして不滅らしい。

仕上げにお買い物袋を手にしたとたん、彼女の顔つきが一変する。

やや肩をいからせて眉間に皺を寄せ口をキリッと引き結んで、子供役の私を見るまなざしは、もう独裁者。

「ああ忙しい、忙しい」

と走り回りながら、私に山のように用事を言いつける。


家庭における母親の権力がいかに絶大であるか、改めて思い知らされる瞬間だ。


春のある日。

庭でみんなで遊んでいたときのこと。

3歳になったばかりの男の子が、こちらへ一目散に走ってきた。

私の前まで来ると、息を弾ませながら

「これ、あげる」

と小さな手を差し出した。

むっちりした指の先に、米つぶほどのピンクの花びらがあった。

「えっ、私にくれるの?」

男の子は誇らしそうに、ニッと笑ってうなずいた。


庭に落ちた花びらを見つけて・・・拾って・・・私にあげようと走ってきてくれたのだ。

今まで貰ったどんな花束より素敵な、小さな贈り物だったブーケ1

今年も、もうすぐそんな春がやってくる。



空をみる人-雪ダルマ20110212.jpg
子供たちが作った雪だるま  撮影 美海