あたしが出産した病院は母子異室の病院だった。
あたしは病室、タツは新生児室とずっと離れていて、授乳時間になると病室から授乳室へおっぱいをあげに行く。
まだまだオシモの傷が痛い産婦さんたちが一斉に授乳室へ歩いて行く姿はまるでペンギンの行列だ。

お産が終わって感動のご対面もつかの間、タツはすぐに新生児室へ連れて行かれ、次に会ったのは8時間後だった。生まれたばかりの我が子をゆっくりと見る暇もなかったのはちょっと残念だった。
出産直後の写真も無いし、せっかくお見舞いに来てくれた人にも抱っこしてもらえず、ガラス越しの対面じゃ、ちょっとね。
ちなみに上二人の時は個人病院の個室だったこともあり、分娩当日から母子同室で、写真は取り放題、抱っこもし放題だったんだけど。

授乳時間は、7時、10時、14時、15時半、19時、22時。
あと希望者は夜中の1時と4時にも授乳に行くことが出来る。
でもほとんどのママさん達は夜はゆっくりと休んでいた。あたしもなんだけど。
入院中は授乳の合間に食事、回診、検温、いろんな指導があったから、病気入院とは違って結構忙しくて大変だった。いつも時計を見て「次は○○の時間だ!」って感じ。

授乳室では、
①シャワーキャップみたいなのをかぶる。
②石鹸で手を洗い、そのあと消毒液で手を消毒する。
③赤ちゃんを受け取り、オムツを替える。(ウンチ、オシッコが出ていたら申告)
④ベビースケールで赤ちゃんの体重を量る。
⑤おっぱいをあげ、ゲップをさせる。
⑥ベビースケールで赤ちゃんの体重を量る。(④との体重差でおっぱいを飲んだ量がわかる。)
⑦オムツをもう一度見てから赤ちゃんを返す。
っていう流れだった。

結構面倒なんだけど、おっぱいだとミルクと違ってどれくらい飲んだかわからないから、実際にはかりで計った量がおっぱいだとわかると気分的に安心するのよね。
授乳室ではいつもクラッシックやオルゴールなどのゆったりとした音楽が流れていた。
壁にも「ゆったりとした気持ちで授乳しましょう!」と書いてある。
牧場で牛の搾乳をする時に「モーツアルト」を聞かせると牛がいいおっぱいをたくさん出すって話を聞いたことがあるけど、この音楽はそれを狙ってのことなのかしら?
あたし牛なのね・・・。

赤ちゃんが生まれても実際におっぱいが出始めるのは2~3日後。
それまでは赤ちゃんに吸ってもらうことで脳におっぱいを作る命令を出させるんだって。
始めのうちは出なくても、とにかく赤ちゃんに吸ってもらうことが大切らしい。

あたしは上二人の時には2~3ヶ月で「母乳+ミルク」から完全にミルクになってしまったのよ。
入院していた病院の方針で、「おっぱいが出なかったらすぐミルク」「出ないおっぱいをいつまでも吸わせていると赤ちゃんが疲れてかわいそう。」とか言われて、あたし結構「母乳コンプレックス」があったのよね。
母乳は出てなかったんじゃなくて、たくさん出ていたのよ。
でもピトチの時は吸う力が弱くて飲めなかったし、ヒカの時は逆に吸う力が強すぎて(というか噛まれて)おっぱいに傷が付いて結局飲めなくなっちゃったのよ。
赤ちゃん連れでどこかへ行くと知らないオバちゃんが話しかけてきて、必ずと言っていいほど「母乳(で育てているの)?」って聞いてくるし。
「母乳で育てなきゃダメだ。」って思うほどプレッシャーになって余計出なくなっちゃうんだよね。

そんなことがあったから、今回は「あげられたら完全母乳が理想だけど、ミルクもいいね。作るの面倒だけど、人に預けてどこかへ行けるし。」って気楽に構えていたら、あたしもそこそこ母乳が出るし、タツも上手に吸ってくれるから、退院した今はミルクをあげなくても母乳だけで済んでいるからうれしい。
母乳は赤ちゃんの成長にとてもいいけど、なんといっても「ただ(無料)!」
ミルク代や哺乳瓶の消毒など、やっぱりミルクはちょっと大変だもんね。

タツと同じ頃生まれた赤ちゃんは5人いた。
そのうち4人は初産婦さん、あとの1人はあたしと同じで3人目を出産の人だった。
初めてあたしが授乳室に連れて行ってもらってみなさんに紹介された時、「みわ~んさんはお子さん3人目なのよ。上のお子さんは10歳と8歳ですって。」って助産婦さんが言ったら、初産婦さん達は「まあ、すごい!」と言いながらあたしの顔をじっと見ていた。
きっと上の子の年齢からあたしの歳を推理していたんだろうな。
初産婦さん達はみんな若かった・・・。みんなどう見ても20代、あたし30代・・・。
でもお母さんって子どもの歳が同じだと不思議と自分達の年齢に関係なく仲良くなれるんだよね。
授乳室でほんの何日間かだけど、毎日授乳の度に一緒に赤ちゃんにおっぱいをあげていると、なんだか不思議な仲間意識が出てくるのよね。
退院してからも「みんなも今頃赤ちゃん相手に頑張っているかな?」と思うと、夜中の授乳もそんなに苦じゃなくなるのよね。
また今度どこかで会えるといいな。