2月12日はブラジャーの日です。1913年にアメリカでブラジャーの原型となる製品が発明されたことにちなみ、制定しました。
日々お世話になっているブラジャーですが、日本に於いての歴史を辿ると浅く、100年の時を経ていません。しかし、その短い期間に飛躍的に進化したブラジャー!スタイルのよい日本人が増えたのは、メーカーさんの企業努力により優秀なブラジャーが多数開発されたおかげでしょう。
スタートは昭和4年。ブラジャーの原型なるものが誕生しました。その名は乳房バンド!あまりにも直球なネーミングですが、当時の女性は身につけたのでしょうか?
その頃はまだ和装と洋装が混在していました。バスガールはじめ女性の社会進出とともに洋装ファッションの人も増えてはいましたが、洋装下着を身に着けるとまではいかなかったようです。見た目はモダンな姿でも洋服の中は腰巻という風に、和装下着を愛用する人がほとんどでした。
乳房バンドは薬局や小問物屋さんで売られていました。布巻きに似たようなもので、別名「胸元帯」「乳押さえ」「乳バンド」とも呼ばれていたようですが、爆発的ヒットにはなりませんでした。当時、バストメイクやバストアップという美意識はなく、あえて乳房バンドを買わずともガーゼや布を巻いて乳房を保護出来れば充分だったのです。巻いて胸を隠すのなら、新しいものを買うよりも「あり物の布」でよいと思ったのでしょう。もしくは、売り場で「乳房バンドをください」というのに恥じらいがあったのかもしれません。どちらにしても、ほんの一部の上流階級以外には洋装下着は浸透しなかったそうです。
余談ですが、以前、日本によって統治されていたパラオ共和国ではブラジャーのことを「チチバンド」と言うそうです。日本語がそのまま!驚きですね。
ところで、現代のブラジャーはファンデーションガーメントと言って、下着の中ではガードルやウエストニッパー等とともに「体型を整える機能下着」のカテゴリーに分類されます。ファンデーションとは「体型を整え、理想のプロポーションに近づけるアイテム」です。着用した時に、明らかにヌードよりスタイルが整うという機能を持ち合わせています。ちなみにランジェリーとはキャミソールやペチコートなど!着てもスタイルは整いませんよね。この定義から言うと、乳房バンドはファンデーションではないということになります。バストを隠すことは可能でも、バストを整えることが出来ないからです。
では、女性の体型を整える「ファンデーションとしてのブラジャー」が誕生したのはいつでしょうか?それは、戦後の1945年頃からだと言われています。
和江商事(現:ワコール)の創業者である塚本幸一氏が、海外から入手したブラジャーを見て「いけるっ!」と確信したところから始まります。当時、和江商事はアクセサリー販売をしていましたが、戦後という時代背景もあり苦戦していました。そんな中、先見の明を持った塚本氏は「今後、洋装が主流になればブラジャーは絶対に必要になる」と信じて開発を重ねました。すぐにヒットが生まれたわけではなかったそうですが、日本人に受け入れられる洋装下着を作り続け、遂に1949年にスプリング製のパッドを生み出したのです。これがパッドのルーツです!
パッドはブラジャーとともにファンデーションガーメントに属します。つまり「体型を整え、理想のプロポーションに近づけるアイテム」なのです。現在のパッドは主にクッション性の素材ですが、バスト全体をカバーするフルパッド、乳頭部をフォローするトップパッド、サイドや下部からバストを移動させボリュームを出すハーフパッドなどバリエーション豊富に体型を整えることが出来ます。
スプリング製パッドは言って見れば「元祖フルパッド」です!女性達は飛びつき、更につけ心地のよいゴム製のパッドも誕生しました。パッドは大流行し、なんとニセモノまで登場したそうです。
この頃からブラジャーはじめ洋装下着への意識は高まり、わずか数年後の1955年には百貨店で初めてランジェリーショーまで開かれました。本格的な機能下着のブラジャーが誕生してからまだ80年弱です。しかし、この80年の歩幅は大きく、快適なブラジャーをつけられることに感謝するばかりです。
下着美容研究家 湯浅 美和子
日本ボディファッション協会認定インティメイトアドバイザー