9月17日、「モーニングCROSS」内「オピニオンCROSS」コーナーで

ストーカー行為とその処罰をテーマにお話しました。コメントを以下にupします。

(内容は一部、再編集を加えています)

 

●ストーカー行為規制法 「見張り」とは何か

元交際相手らの車に無断でGPSを取り付けて居場所を知ることは、ストーカー規制法が禁じる「見張り」に当たるかどうか争われた2つの事件の上告審判決で、最高裁は7月30日、「見張りに当たらない」との初判断を示しました。

 

●コメント

 今回の裁判で対象となった事件は2件。うち1件は、別居中の妻が使用する自動車にGPS機器をひそかに取り付けて、多数回にわたって車の位置情報を探索し、遠くから車の位置を探索していたというものです。

 

 地裁の段階では見張りに「当たる」とされましたが、2020年7月30日に「当たらない」として最高裁の判断が出ました。

ストーカー規制法では「見張り」について、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし」と「見張り」について場所的限定を加えて規定しています。

 最高裁は法律の文言を基にして、その他の場所、例えば今回のようにGPSを取り付けたとしても離れた場所から位置を探索にしたに過ぎない場合には、ストーカー規制法が規定する「見張り」には該当しないと判断を下したのです。

 

 私個人は、この判決自体は妥当だと思います。

 というのも、人に刑罰を科するときには、法律の文言を厳格に解釈しないといけません。ストーカー事案であれ他の事案であれ、事前に書いてない文言で罰されるようなことがあってはならないと思っています。

そうしないといつ何時、恣意的処罰がされるか分からず市民生活が不安にさらされてしまうかもしれないからです。

 

 ストーカー規制法が成立した当時、「GPSで位置を探索する」という状況は想定されていませんでした。今回の一件に限らず、GPSをつけられて調べられているという話はよく見聞きします。技術の進歩に法律が追いついていない側面は確かにあります。時代に合わせた適切な処罰内容を定めて法改正を行っていくことが大事だというのが基本的なスタンスです。

 

 ただし、何でも処罰の対象にするような考え方、「とにかく広く網にかけよう」というような考え方はあまり望ましくありません。法改正は適宜にかつ慎重に行われるべきだと思います。

 

 さらに検討すべきことは、加害者に加害行為をさせない、再犯をさせない仕組みについても構築することです。

特にストーカー事案の場合は、自分の行為の問題性を自覚できていない場合もあります。

 この番組でも何度かお話していますが、犯罪を犯した人が抱える問題を見つけ、その本質にアプローチすること、そして加害のプロセスにはまらないようにすること、そして結果的に再犯防止のプロセスを導くための「治療的司法」というアプローチが必要だと考えています。

 

 罪を犯した人に罰を与えるだけでは本質的解決にならないことが多々あるのです。

そのため、罰を与えるだけでなく、罪を犯した人にも治療やケアを施すこと、それが社会全体の安全につながるという考え方です。

 

 また、今回の件に関して言うならば、「知らないうちにGPSを知らないうちにつけられていた」といった事態を回避できるようなテクノロジーも必要ではないかなと思います。

GPSをつけること自体は簡単ですが、そもそもつけられていること自体に気付けなかったり、気づいても解除が難しかったりするんですね。そのような恐怖を防げる技術があればいいですよね。ストーカー行為に対するケアや制度はまだまだ不十分で、色々な観点から解決の手法が模索されていっていいと思っています。

 

 【構成=松岡瑛理

 

*****
弁護士の三輪記子(ミワフサコ)です。
2010年12月の弁護士登録以降2017年秋までは京都で執務していましたが、

2017年秋に同期の塩見直子弁護士と『東京ファミリア法律事務所』を開設しました。
東京ファミリア法律事務所は女性弁護士2名の法律事務所です。
表参道駅A2出口から徒歩7分くらいの閑静な住宅街にあります。
離婚、不倫、遺産分割、契約書チェック等々
お困りのことがございましたらお問い合わせください。
秘密は厳守いたします。
ご予約いただきましたら早朝、深夜、土日祝日の法律相談も承ります。
お問い合わせはHPかお電話(平日9~18時)からお願いします。
なお、法律相談は30分ごとに5500円です。
案件ごとの料金につきましてはご相談時にご説明いたします。
メール:fmiwa@tokyo-familiar.com
電話 :03-5413-8310