519.20日に、ボルダリングワールドカップ第5戦がドイツのミュンヘンで行われました。例年は最終戦がミュンヘンで開催されていましたが、今年は早めの開催でした。

結果はこちら

男子
1
位 ヤコブ・シューベルト (オーストリア)
2
位 アダム・オンドラ (チェコ)
3
位 ヤン・ホイヤー (ドイツ)
4
位 アレクセイ・ ルブツォフ (ロシア)
5
位 アンゼ・ペハルク (スロベニア)
6
位 チォン・ジョンウォン (韓国)

女子
1
位 ヤンヤ・ ガンブレット (スロベニア)
2
位 ファニー・ジベール (フランス)
3
位 ミア・クランプル (スロベニア)
4
位 ジュリア・シャノーディ (フランス)
5
位 カズブコワ・イエブゲニア (ウクライナ)
6
位 カーチャ・カディッチ (スロベニア)

今週末に行われるコンバインドジャパンカップの調整のため、今大会は欠席する日本人選手が多かったので、決勝に一人も日本人がいないという、新鮮な感じでした。
コンバインドジャパンカップは、その成績によって世界選手権への出場権が得られ、世界選手権の成績でオリンピック出場につながるという、大事な大会です。

男子決勝

1
課題目は同じ形のホールドが連なった、パワフルな課題です。体全体に力が入った状態が続き、息をつく間もありません。
前半でゴール付近まで行ったアレクセイ選手やチョン選手も、それ以降のトライでは疲労のためゴールどころか前半をこなすこともできなくなりました。
見ただけで全ての動きを予測するのが困難な課題なので、登りながらもムーブを考えながら登らなくてはなりません。そのため壁に取り付いている時間も長くなり、余計に体力を消耗してしまいます。上部での落下は命取りなのです。
一番惜しいトライだったのはヤコブ選手。少し余裕も感じさせつつ、ゴールの一歩手前まで登りますが、そこで足を滑らせて落ちてしまいました。残り時間が無かったため、もう一度トライすることも出来ず、悔しい表情で壁の裏に戻って行きました。完登する力は充分あったように見えますが、足が滑りやすいホールドで失敗をしない集中力も、実力のうちです。
完登者が出ないまま、準決勝の課題を全て登って1位で決勝に進出した、アダム選手が登場しました。アダム選手は終始落ち着いてゴール手前まで登っていきました。そこからすぐに左手をゴールに伸ばすかと思いきや、まず足を右手で持っているホールドまで高く上げ、体勢を整えてから右手でゴールを掴みました。足をあげるのは、初めから決めていたように動きましたが、最後に右手を出すという選択は咄嗟に判断したように見えました。
アダム選手は1撃で1課題目を登りきり、客席は大歓声をあげました。


2
課題目は、打って変わって完登の嵐でした。全選手が完登します。しかし1回のトライで登ったのはやはりアダム選手だけでした。
選手が落とされたのは、1手目。右にジャンプしながらホールドを取る動きです。右に飛び出すことで体は右に大きく振られます。その振られを抑えることができずに、そのまま右に流れて落ちてしまうのです。
アレクセイ選手は足を先に上げることで振られを生まないムーブに辿り着きました。そのほかの選手は、何度かトライすることで、ジャンプの高さや体の位置を修正して、振られを抑えました。アダム選手は最初のトライで、完璧な動きが出来ていたので、1手目を止めることができました。
体の位置が正しい位置にないと、両手が伸びて力が入らず、振られを止めることができません。

https://youtu.be/iz7-t3cj0CQ?t=3323

しかしアダム選手は両手の肘を直角に曲げた状態で固定し、上半身を動かなくして振られに耐え、下半身で勢いを逃しています。
2
課題連続の一撃です。

https://youtu.be/iz7-t3cj0CQ?t=4008

3
課題目は傾斜が緩く、バランスをとりながら丁寧に登る課題です。中間部の、右手で小さなホールドを押さえ、左足に乗り込んでいく動きのところ。ここを超えられるかが重要でした。
ここでポイントになるのが、左手です。左手で次のホールドの下側を持ち、乗り込む際の補助にすることで、この難所を超えられます。

ここを超えられなかったヤン選手。左手でホールドの下側を触りますが、結局左手の補助なしで動いて、落下してしまっています。

https://youtu.be/iz7-t3cj0CQ?t=5323

この動きが一番上手かったのはアンジェ選手。しかしアンジェ選手はゴールを取れず、完登には至りませんでした。

https://youtu.be/iz7-t3cj0CQ?t=4542

完登したのはアレクセイ選手、ヤコブ選手、アダム選手です。アダム選手は3連続の1撃でした。


4
課題目は壁を大きく使った、動きのある課題。ゾーンを取るにはコーディネーションの動きをうまくこなさなければいけません。
この課題を登ったのは、ヤコブ選手とヤン選手。これまで全ての課題を1撃してきたアダム選手は、ゾーンを取ることができませんでした。原因は2課題目のように、肘を曲げていなかったからです。ヤコブ選手とヤン選手の登り見ると、最初に出した右手から、肘がしっかり曲がっているのがわかります。
ヤコブ選手

https://youtu.be/iz7-t3cj0CQ?t=6262

ヤン選手

https://youtu.be/iz7-t3cj0CQ?t=6380

しかしアダム選手は右手が伸びきった状態で左手を出しているため、体の位置が下がってしまい、最後に右手を寄せた時には振られに耐えられる状態ではなくなってしまっています。

https://youtu.be/iz7-t3cj0CQ?t=6717

ヤン選手はこの課題を1撃で登り、自国での大会を盛り上げました。3課題目が終わった時点では5位でしたが、この完登によって表彰台入りを果たしました。



女子決勝

女子1課題目は、男子の3課題目のように、バランシーな下部を抜け、ゴールホールドに飛びつくといった課題。
決勝常連の、ファニー選手とヤンヤ選手は1撃で完登。
ウクライナのカズベコワ選手は、登るたびに動きを修正し、3トライ目でゴールしました。

2
課題目ではファニー選手とヤンヤ選手はどちらも2撃。加えてスロベニアのミア選手も完登します。ゾーンを取ってから、何度も足が離れて手だけでぶら下がる状態になりますが、肩の強さで全て耐えてみせます。リーチの長さも助けになり、粘りを見せてゴールまでたどり着きました。

https://youtu.be/iz7-t3cj0CQ?t=9885

一方ファニー選手は柔軟性を生かし、技を駆使しながら確実に高度を上げ、安定した動きでゴールまで登りきりました。

https://youtu.be/iz7-t3cj0CQ?t=9605

やはり選手によって登り方が違うので、見ていて面白いですね。

3
課題目はコーディネーション課題です。1手目に両手で飛びつき、振られに耐えます。今度は体が反対側に戻されるので、その勢いを生かしつつ両手で体を引きつけて進行方向を上向きにし、手を出して次のホールド、ゾーンをつかみます。

https://youtu.be/iz7-t3cj0CQ?t=11142

カーチャ選手は飛び出す際、左足が下に残った状態で飛んでいるため、距離が出せず、なかなかゾーンが取れません。しかし、腕の引きつけ力の強さでそれをカバーし、最後のトライでゾーンを掴みます。しかしパワー消費の大きいムーブで何度もトライしていたので、力尽きてゴールを掴むことはできませんでした。

https://youtu.be/iz7-t3cj0CQ?t=11571

4
課題目。一人目に登場のジュリア選手は、競技時間開始から1トライに2分半を費やして11手踏ん張り、1撃で完登しました。
続くファニー選手は、中間部で一度ミスをしてしまい、落下。次のトライではムーブを変え、しっかりゴールホールドを掴みました。
ミア選手はじわじわと丁寧に高度を上げますが中間部のファニー選手がフォールした部分をなんと、自分の腕に足を引っ掛ける、フィギアフォーという技を使って切り抜けて登りました。これは大会で使う場面が少なく、なかなか見ることができない技です。

https://youtu.be/iz7-t3cj0CQ?t=12557

カーチャ選手はこれまで0完登でしたが、最終課題では安定した登りを見せ、見事1撃しました。
カズベコワ選手はゴールの一歩手前のホールドが取れず、完登できませんでした。ほかの選手が使っていたホールドの、一個左側のホールドに足を置いてしまったため、バランスを保てなかったのです。

https://youtu.be/iz7-t3cj0CQ?t=12849

最後の選手、ヤンヤ選手は随所で余裕を感じさせる登りで上部まで登りつめ、最後は少し慎重に、緊張した動きで確実にゴールを決めました。これで驚異の5連勝。ボルダリングワールドカップは残すところあと1戦。いやでも期待してしまいます。

https://youtu.be/iz7-t3cj0CQ?t=13061



ボルダリングワールドカップ最終戦は、67.8日にアメリカのヴェイルで行われます。
いよいよ最後!その後はリードワールドカップ が始まりますよ!

その前に、来週は愛媛でコンバインドジャパンカップです!