「おはようございま〜す」
今、できる限りの笑顔と元気を乗せて。
廊下を歩きながら、
すれ違う人たちに挨拶をする。

──何も変わらない景色。
いつもと同じ。いつもの空気。

(私……また、ここに戻ってこられた)

心が悲鳴をあげた夜の仲間は、
今日はここにはいない。
少しほっとしていた、その時。

『おっ!来たなあ』

背後から、聞き慣れた先輩の声。

(えっ?先輩?!今日はお休みのはず…)

驚きで固まる私に、
横から上司の声が重なる。

「おはよう。来たね。」

(えっ……上司もお休みのはず…)

私は「えっ?えっ?あっ!」
「おはようございますっ……!」
それしか言えなかった。

(あっ! ちゃんと謝らなきゃ)

─ でも、やっぱり遮られた。

誰ひとりとして、あの日のことに触れない。
知っている人も多いはずなのに。

少しの気恥ずかしさと、
胸の奥に広がるあたたかさ。

そんな中、慌ただしく“日常”が始まった。

✼••┈┈┈┈┈┈┈┈••✼

就業時間の関係で、式には間に合わない。
でも「今夜は22時までご家族が式場におられるよ」と仲間が教えてくれた。

✼••┈┈┈┈┈┈┈┈••✼

式場に到着すると、ご家族さまが 先に
気づいて声をかけてくださった。

「まあ……お忙しいのに、
        ありがとうございます」

少し驚きながら深くお辞儀をし、
お悔やみの言葉を伝える。

続けて
あの日ご迷惑をおかけしてしまったことを
謝ろうとした瞬間。

「近く来たってー。」

棺のそばで、ご家族さまが手招きをされた。

(また遮られた……)

ゆっくりと棺に近づき、お顔を見る。

(あ……)

穏やかで、
やっと苦しみから解放されたような表情。

(良かった……ほんまに、良かった)

「……触れても?」

『もちろんです。叩き起こしてやってー』

一礼して、そっと頬に触れる。

(冷たい……)

胸の奥がざわつく。(泣いたら…だめ)
頬に触れた手が震えた。

私の手が慣れたのか、
触れた冷たさが和らいだのか⋯
その温度が、私の知るあの人に
戻ったように感じた。

ふと、初対面の日がよみがえる。

「……こない べっぴんさんに会えるなんて
神さんは、まだ いじわるしはるんやなあ」

挨拶の前に言われた衝撃の一言。

緊張でカチカチだった私を
ふっと和ませてくれた。

ギクシャクしながら 
自己紹介と今後の説明する私に、

「硬い、硬い!緊張せんでええよ。
顔こわばっとる。
せっかくのべっぴんが台無しや」

(いや、そう言われても緊張してまう……)

『すみません』

「そこは“ありがとう”や」

『……ありがとうございます?』

(なんで私、質問みたいに返してるん……)

でも、その不器用なやり取りを、私は
今でも鮮明に覚えている。

あの日から半年──
冗談も、軽口も、
笑顔も交わせるようになった。

……でも、ひとつだけ。

守れなかった約束がある。

「笑ってる顔が大好きやからな」
最期まで、そう言ってくれていたのに。

あの日、私は、笑えなかった。

━━でも。

守れなかった約束は、
今日ここで終わりじゃない。

これから先は、必ず守る。
これは、 “新たな誓い”。

どうか見ていてください。
私、頑張るからね!!


P.S. ⋯⋯⋯
ツラい事、大変な事、
涙してしまう事も たくさんある。(あった)

でも、私は今を ちゃんと生きているよ。
毎日、たくさん笑っているよ。

いつも、本当に ありがとうございます🍀.*