新国立劇場バレエ団《ジゼル》ロンドン公演の録画
かなり遅ればせながら、新国立劇場バレエ団《ジゼル》のロンドン公演の録画(NHK BSの放送の録画)を鑑賞しました。《ジゼル》の物語では花が重用な役割を担っていますが、芸術監督の吉田都さんががピーターライト版をベースに演出した《ジゼル》では、さらに多くの白い花を用いて物語の解釈を観客に伝えていました。ジゼルが恋占いをしたマーガレット、アルブレヒトがジゼルの墓に置いたユリの花束、亡霊の女王ミルタが持つギンバイカの花(ミルタの名前の由来)、亡霊になったジゼルが持つ白い花、亡霊になったジゼルがアルブレヒトに手渡した白い花、ジゼルの亡霊が残した白い花の髪飾り…。米沢唯さん演じるジゼルが花の香りを堪能する仕草をする度に、観ている私にまで香しい花の香りが伝わってきましたし、白いチュチュと白い花の組み合わせがとても美しく記憶に残りました。亡霊になったジゼルがアルブレヒトを許し、ウィリからアルブレヒトを守ろうとする場面では、人の心の温かさを感じました。鑑賞後は白い花のブーケをプレゼントされたような気分になりました。こんなに後味の良い《ジゼル》の物語は初めてでした。一般的なジゼルの舞台には登場しない花は、録画を繰り返し再生しても、公演プログラム(新国立劇場で購入)を読んでも、何の花かは分かりませんでした。その代わり、物語と照らし合わせながら、白い花の正体をあれこれ推測する楽しさがありました。「ジゼルの亡霊がアルブレヒトとの和解前に乱暴に投げた花は、『花嫁の喜び』という花言葉を持つオレンジフラワーで、『花嫁の喜び』がアルブレヒトに踏みにじられたことを意味しているのかな?」とか、「ジゼルの亡霊がアルブレヒトに手渡したのは、『和解』という花言葉を持つ「ベツレヘムの星」で、中世ヨーロッパでは魔除けになると信じられていたので、ウィリからアルブレヒトを守るために渡したのかな?」とか、「ジゼルの髪飾りは『完璧な女性』という花言葉を持つカメリアだったのかな?」とか。今回、私が初めて《ジゼル》の物語を素敵だと思えたのは、いくつもの白い花を使った演出のお陰というよりは、関晶帆さん演じるベルタが人として魅力を感じない冷酷な貴族だったからだと思います。私がこれまで観たことのあるベルタは例外なく、正気を失って倒れたジゼルを気遣う様子を見せていたのですが、関晶帆さんのベルタは自分の事しか考えていない感じ。これなら、アルブレヒトがベルタを裏切ってジゼルに思いを寄せても仕方がないなと思えました。井澤駿さん演じるアルブレヒトも、ジゼルの墓にユリの花を手向ける様子は見るに堪えないほど悲痛で、ジゼルを本当に好きだったことが伝わってきました。ここからは蛇足です。今回は録画での鑑賞でしたので、ダンサーの顔の表情の演技までしっかり堪能することができましたが、客席ではどこまで見えるのかななんて考えてしまいました。米沢唯さん演じるジゼルの穏やかな顔の表情と優美な舞いも、新国立劇場バレエならではなの整然とした群舞の美しさも、両方とも観られる席は1階前方くらな気がしました。オペラグラスがあれば、舞台から遠い席でもダンサーの顔の表情は観られるけど、視野が狭まって群舞は視野外になってしまうでしょうし‥。演劇の要素が強いイギリス流のバレエの場合、舞台を100%堪能できるのは、ほんの一握りの貴族席だけのような気がしています。AIで生成した舞台に登場した花をブーケにした画像