小学校一年生の男の子が、
空手に強くなりたくて、私の運営するムエタイジムに通っています。

その空手少年。
いつも、うちのムエタイ道場で練習してから
空手の教室に行くんです。


「どこの道場に通っているの?」

「○○道場です。」

「あ、○○さんのことか。」


その空手少年の通う道場は
実は、空手の先輩が主宰する道場だったのです。

20年前に同じ道場で稽古していましたので
「おい、○○さん、こんな感じの組手スタイルやろ?」
と真似をすると、
「それ!それ!よくやる!!」
とお母さんと生徒さんが叫んでました。


自分の道場に通う生徒が、
空手ではないにせよ、ムエタイジムに通ってると知ったら、
その先輩も正直、あまり良い気がしないと思いましたので、
お母さんには、
「でも、ここに通っているのは、内緒にしておきましょう。」
と言いました。


普段、うちのジムは タイ人のコーチが教えます。
でも、空手とムエタイはだいぶルールが違う事もあり
空手大会で勝ちたいという目的で通う生徒さんからの
リクエストにより、私が教えることもあります。


子供から、というより お母様から、ご指名を頂きますので。

なぜかって言いますとね、
私は指導歴4年以上ありまして、教えるの比較的上手なんです。
練習が嫌いな分、要領が良いのもありまして、合理的で
無駄な努力させません。



先日、その子が、私の教えた動きを空手の大会で出したんです。

するとそれを見た先輩(道場主)が
「これぞ、教科書のような動き」
とえらい、褒めたそうなんです。


それでお母さんがすごく喜んでくれましてね。

「こちらで、教わった事が教科書通りだと言われました。」

「そうですか。良かったです。」

なんのことはない。
20年前、先輩と私は、今は亡き同じ師匠に、繰り返し繰り返し
教えられた動きなんですから。

そりゃあ、教科書通り、に決まっていますわな。

先輩からすると
小学生1年生の生徒が、大会で
教えてもいない、自分の体にしみついている
「捌きからの反撃のパターン」が、いきなり出たら
お!!と、なるのもわかります。


それを聞いて、私は妙に何だか嬉しくなりました。

同じ道場で汗を流していた時から、もう20年間経っています。

世代が違うのもあり、あまり特別仲が良かったわけでもなかったから
連絡先すら知らないですし、20年以上会っていないんです。

ましてや、相手はこの私の存在を知らない。

でも、実は
毎週 同じ曜日に、同じ少年に、
かつて同じ師匠から自分たちが習った事を教えている。

なんか、その事に凄くジーンときてしまいまして。


この子が、将来、強い選手に育ったら
いつか、先輩にごあいさつに行こうと思っているんです。


「オス。あのね、あの子は、先輩じゃなく、私のおかげで強くなったんですよ。」
って。