独立したての頃、私は

そりゃ何でもやりました。


「おい、三浦君あれやってくれ。」

「サー!イエッサー!!」


考える前に、すぐさま返事をする。

アメリカ海兵隊員のような気持ちの良い男だから

こそ、下請け業者として可愛がってもらえます。


捨て看板というものを見たことがありませんか?

あれ、違法なんですね。設置が。


違法なんですけども、抜群に効果が出ます。

短期間で撤収されますけどね。


土日に、モデルルーム案内会があるとしますね。


金曜日の深夜23時30分越えた位に、現地案内所近くに

集合をかけておきます。

既に私は住宅地図に綿密な捨て看板の配置箇所を記入しており、

集合したタイ人および日本人フリータ 2名はさっそく

車(4WD)の後部座席を倒してフルフラットにして、看板を積み込みます。

3列にします。 右への→ 左への← まっすぐ↑ と

方向が3種類あるので、取りやすいように3列に並べるのです。


その準備が終わると

後部のドアを開けっ放しにしながら、

地図の道路を進み、地図に印をつけた電柱に着くと

「ゴー」と日本語のあまりわからないタイ人に私は

すばらしく流暢な英語で指示を与えます。


すると、タイ人は看板を脇に抱え、車から降りていって

看板を電柱に針金でくくります。


気をつけないと

矢印の方向が間違っていたりするので

(看板を見て、いけどもいけどもあさっての方向になってしまう)

↑の向きチェックは欠かせません。


針金をくくっている時間にも車は

次の設置電柱までゆっくり進みます。15mほど進むのです。


そして、車にまだ載っているもう一人の日本人フリーターに

「よし、行け!」と指示を出します。

「ラジャっす。」今度は彼が看板を設置します。


その間に、タイ人は看板をつけ終わり、はるか後ろから

とっとこっとっとこ、走ってきます。


タイ人を車に載せて

しばらく行くと

「ゴー!」

するとタイ人は看板を下ろし、

電柱に看板を針金で固定します。


すると、はるか後ろから

とっとことっとこ、日本人フリーターが走ってきます。

そいつが、車に乗り込むのを確認して

しばらく車を走らせ

「行け!」

また看板を下ろし・・・この繰り返しです。


警察に見つかると、捕まりますから

スリル満点です。


不動産デベロッパーさんから

「毎週、アルマダさんにこういう事をお願いするのは

何なのですが・・・。」

こういうときは、副社長が

何気に気を使って会ってくれます。


「わかっていますよ。今週も頑張ります!へへへ。」

「いやあ、先週 朝8時くらいに、現地に行ったら

看板が、ズラーっと並んでいるのを見たときに ああ、頑張ってくれてはると

思わず目頭が熱くなりました。こんなこと、うけてくれるのアルマダさんだけです。」

「いや、リスクとらないとなかなか食べていけませんから。」


ひとつ看板つけるごとに400円。

100本つけて、4万円。

運転役の私、合わせて2時間くらいで

3人でその売り上げ。

私が仕切ると、大体2,3時間で終わります。

スタッフに仕切らせると、倍の時間かかります。

だから、タイ人にとっては怖い私が仕切るほうが嬉しいのです。

「社長厳しいけど、すぐ仕事終わるナ。わたし、嬉しいナ。」

もちろん、国籍に関係なく一人1万円ずつ払います。

一晩、3時間で2万円稼げるのならやるぞ!!と思っていました。


それが、独立した当時のアルマダです。

さすがにもう、今はそういう仕事は請けていませんが。

グレーというか、ブラックな仕事も請けていました。


もちろん、法学部を出ていますので

日本が法治国家だって(うっすらではありましたが)わかっていましたが、

「生きていくのに、仕方ねえか」と思っていました。


独立した人が、10人いるとしますね。

10人に3人、一年以内に失敗します。

10人に5人、3年以内に失敗します。

10年以上、会社が存続する確率 たった10パーセント

その厳しいサバイバル環境にうちは5年目まだ生き残っています。

うちの考え、商品を支持してくださるあなたのようなお客様のおかげさまで、

他人から見ても(銀行)すばらしい業績の会社だと褒めてもらえるようになりました。


おれもいずれは独立したいとか居酒屋で語るサラリーマン。

よくいますけど、まずは現実を知って欲しいと思います。

じゃないと、周りの人間を不幸にするので。借金の話です。

成功した人はBIGTOMORROWといった雑誌に「夢をあきらめるな」なんて話が良く出ていますが

あんなもの、成功したから 後で美談に変えているだけなんです。

どん底なんて、無いにこしたことありません。

失敗した人は自らを語りたがらないので、起業家志望の人は皆、失敗する確率を低く思いがちなのですね。


その失敗した人って、どうしているとおもいますか?

日払いのアルバイトに応募してくるのです。警備員とか、ポスティング配布員とか。

うち、アウトソーシングもやっていましたから(肉体労働の派遣みたいなもの)

アルバイトの仕事探しながら、家族が食べていけないので、こっそり失業保険貰うんです。

振込先を妻名義にしてくれなんて言うのでこちらもわかるのですね。

40代、50代でアルバイトしながら、他に仕事が無いなんて言いながら

必死に働いているんです。

タクシーの運転手の人に、前職何やっていたのか聞いてください。

昔、社長やってて、ちょっと羽振りの良かった時代もあったよなんて言う人多いと思います。


わたしは、実は本当に気の休まることがありません。

美容室の経営者であるあなたも同じだろうと思います。

でも、私があなたと違うのは 腕に技術が無いのです。

つまり失敗すればそういう人たちと同じ運命になるということです。

そして、失敗した人がどういう生活になるのかという事を

目の当たりにする回数が半端じゃなく多かったのです。


今日、「値上げできない。」って相談を受けていて、

「こんなに良い商品開発したら、心配事なんてないでしょう。」

といわれました。確かに儲かってはいますが、不安は消えないのです。

アルバイト採用の面接で、何十人とそういう失敗した人を見てきたからです。


さて、話を看板付けにもどします。

そのタイ人に言われたことがあります。

「社長は、よく働くな。日本人は、だから金持ちナ。」

運転しながら涙が出そうになりました。嬉しくてです。


さて、先ほど登場したもう一人の日本人フリーターは、今は東京にいます。

その彼から、先週何年かぶりに、電話がありました。

「おれ、CD出ました。報告しとこうと思って。」

彼は、夢であるロックバンドを続けながら

今は、アダルトビデオ制作会社の広報をやっています。

なかなか常識が無くて面白い奴でしょう?

小野孝博と言います。実名、言っていいのかな?まあ、いいか。宣伝してやるわけだし。

「air mail]というバンドです。良かったら聞いてやってください。

検索したら、アダルト業界の授賞式の名前ででヒットします。

これ、親が見たらどうなんだかと思いますけど。


おととい、彼から、彼のCDと彼の勤める会社のアダルトビデオが届きました。

「あくまでもビデオがメインじゃないんで。」

と手紙に断りがついていました。


その手紙によると彼がミュージシャンとして売れると、なんと僕に

「AV女優つきのベンツ」をプレゼントしてくれるそうです。

それまで待っててくれとも書いてありました。


ですから、皆さん 彼のCD買ってください。

AIRMAILです。よろしくお願いします。


私はさっそく、今からどの女優をつけてもらうかを

じっくり検討したいと思います。