楽しみにしていたTV放映だった。録画してすぐに見た。映画「ピアニスト」(2001年 ミヒャエル・ハネケ監督 2時間11分)だ。ハネケの原案だと思ったら、この作品には原作がある。この映画よりも後の受賞だがオーストリアの女性作家、2004年ノーベル文学賞受賞のエルフリーデ・イェリネク(Elfriede Jelinek)の小説だ(Die Klavierspielerin)。

まあ人間というのは分からないものだということかしら。え、この厳格な女性音楽教師(イザベラ・ユペール)がこんな変態行為をするんだ。というのに、まず引き付けられるが、後半はかなり飽きてくる。要するにこの女は「病気」なのだ。しかしそう納得してしまっては元も子もない。人間というのは、多かれ少なかれ「病気」なのだというのがハネケの基本原理だろうから。

前半はピアノの名曲がたくさん弾かれて、いい感じだったが、後半は全然弾かれずに、「病気」のアラフォー女と普通の20代男の痴話話に終始してしまった。


女子トイレでの熱烈なキスシーン


ただ一人だと、単なる変態志向(この描き方が秀逸)のアラフォー女で済むが、恋愛というコミュニケーションのレベルになると、コミュニケーション不全から、「病気」は「狂気」に変わり、変態志向は、「犯罪」の領域に及んで来るというのがこの映画のテーマかもしれない。


この厳格な女性音楽教師は、シューベルトとシューマンの音楽を愛しているというが、映画の中では一度も弾いていない。ただ、批評・指導するだけである。シューベルトの死因は梅毒だが、シューマンも同様に梅毒及びその治療に使われた水銀中毒だという説がある。そうしたことが、2人の作曲家をこの変態アラフォー女が愛した理由のような気がする。


映画のエンディングでは、どんなカタストロフィーを見せてくれるかと大いに期待したのだが。ちょっと、不発かな。