本日(4月21日日曜日15時開演)、東京・春・音楽祭の最終日に、その掉尾ともいうべき「エレクトラ」(演奏会形式)の2日目を鑑賞した。ギリギリまで迷ったが、当日券がかなりありそうなので、出掛けた。開演1時間半前の当日券発売開始だが、13時15分に着いて、私の前には並びが1人!S券を買うつもりだったが、演奏会形式にしては高すぎるとケチってしまい1階Lの10列目のB席を買う。



小ホールではウェールズ弦楽四重奏団の全てモーツァルトの演奏会があり、これには当日券を求める長い行列があった。やはり「エレクトラ」の知名度と2日目ということかな。


B席を選んだのは大正解で音響的には全く問題なしだった。リヒャルト・シュトラウスの大オーケストラの極限の響きを満喫した。

ここ1週間は、予習をシノーポリ(1946.11.2〜2001.4.20)指揮ドレスデン州立歌劇場の来日公演(1995年、サントリー ホール)のyoutubeでしたのだが、これがとんでもない「爆演」で、「エレクトラ」ってやはり狂乱オペラなのかと思うようになってしまった。終わったあとのシノーポリもハーハーゼエゼエという感じで、こりゃ2001年4月20日の「アイーダ」上演中(ベルリン・ドイツ・オペラ)の心筋梗塞での死去(第3幕)も納得できるような上演だった。


今回の配役と演奏は以下の通り━━エレーナ・パンクラトヴァ(アルゴスの王女エレクトラ)、ルネ・パーペ(その弟オレスト)、アリソン・オークス(その妹クリソテミス)、藤村実穂子(彼らの母、王妃クリテムネストラ)、シュテファン・リューガマー(その姦夫エギスト)、加藤宏隆(オレストの付人&従者)、糸賀修平(エギストの従者)、中島郁子・小泉詠子・清水華澄・竹多倫子・木下美穂子・北原瑠美(侍女たち)、セバスチャン・ヴァイグレ指揮読売日本交響楽団(コンサートマスター:長原幸太)、新国立劇場合唱団(指揮&音楽総合アシスタント:冨平恭平)。


1日目(4月18日木曜日)には読響が緩いという評価もあったが、とんでもない。2日目だからかヴァイグレ指揮読響が超弩級の演奏を披露した。ヴァイグレは、私の中ではときに気持が乗って名演を残す堅実なドイツの指揮者だったが、今回の上演でこの指揮者の本質はオペラ指揮者であることが分かった。予習で聞いたシノーポリの一本調子の「爆演」とは異なって、緩急の付け方が実に自然で、全体の見通しがよく、加えて伴奏が実に巧みなのだ。

歌手たちは、二日目ということもあるのか全力投球というのがよく分かる熱演だった。パンクラトヴァ(エレクトラ)とオークス(クリソテミス)の姉妹役の迫力はのけぞるほどだった。そしてその母クリテムネストラ役の藤村実穂子は、顔の表情と歌唱の表現力で勝負したが、これが夫を殺し不眠症に悩む王妃を納得させた。視線の演技が怖くなるほどだった。幕切れの断末魔の「ギャー」という悲鳴は本人だと思うが、凄まじかった。


上演後のカーテンコール


とにかく、「エレクトラ」に対する苦手意識は完全に払拭できた。「サロメ」をさらに激烈に表現主義的にした傑作である。またこれほどの「エレクトラ」に今後出会えるかどうか。そしてこれが東京・春・音楽祭への私の記念すべき初参加であった。