昨夜(4月3日水曜日19時)、大野和士指揮都響(コンサートマスター矢部達哉)をサントリーホールで聞く。サントリーホールへ地下鉄から雨に濡れずに行く方法はないかと考えながら向かう。また、なんでメインのブルックナー交響曲第3番は第3稿じゃなくて1877年第2稿ノヴァーク校訂版なんだとブツブツ考えながら。

前半はアルマ・マーラーの「7つの歌」(日本初演)を藤村実穂子の独唱で。不調なのか声が届いて来ない。オーケストラにマスクされることも何度かあった。これを繊細な表現とは言わないだろう。鶴田浩二みたいに左耳を左手で塞ぎながらの歌唱だった。日本初演と言っても「5つの歌曲」と「4つの歌曲」から7曲抜粋ということ。それに新国立劇場「トリスタンとイゾルデ」からのワーグナーつながりなら「ヴェーゼンドンク歌曲集」だろうと思うが。藤村実穂子の十八番ではないか。それに歌詞の日本語訳の字幕を付けるサービスをしてほしいものである。


後半のブルックナー交響曲第3番第2稿はえ!?が頻出。第3稿がいかに中庸を得た無難で名曲然とした仕上がりになっているかを納得。とくに第4楽章は凄まじい不協和音が仕掛けられていて、ブルックナーの異常性、前衛性、偏執性が全作品中最も露わになった音楽という感じ。これを演奏させられるオーケストラには同情してしまう。しかし、都響はやり遂げた。素晴らしい機能性と音圧である。弦楽器は可哀想なぐらい高速パッセージを弾き続ける。

ホルンのトップは東京シティ・フィルから客演の谷あかねだったが、柔らかい弱音を見事に吹き続けた。トランペット(トップ岡崎耕ニ)、トロンボーンも健闘以上の出来栄え。木管楽器の高水準はいつも通り。

いやあ、聞く方もクタクタであった。


終演後の大野和士


地下鉄からアークヒルズに向かう途中の雨に濡れた桜