昨日(1月20日土曜日14時)、トゥガン・ソヒエフ(1977年生まれ、46歳)指揮N響(コンサートマスター:郷古廉)のコンサートを聞いた。原宿駅で降りて雨の中をNHKホールまで15分ほど歩く。不便なコンサートホールだ。リニューアル後も音響は良くなっていない。なにしろ紅白歌合戦を開催しているホールだ。


今回のコンサート、休憩がない正味60分ほどのコンサートで、料金もいつもより1割ほど安い。コンサート前に15分ほどの弦楽四重奏の演奏があった。モソロフの弦楽四重奏曲第1番の第3楽章と第4楽章。なんかこの弦楽四重奏の響きがモゴモゴして悪く、席のせいかなあと不安になった。



ソヒエフ指揮N響は、昨年1月もラフマニノフの交響詩「岩」とチャイコフスキー交響曲第1番という休憩なしプログラムを聞いたり、11月にはソヒエフ指揮ウィーン・フィルと「ツァラトゥストラ」とブラームス交響曲第1番を聞いた。ソヒエフに関して、絶賛している評論家やマニアが多いのだが、いずれも今ひとつ私にはピンと来ない。私の耳が悪いのだろうか?と思っているが、それを確かめに今回やってきた。

まずリャードフの交響詩「キキモラ」。実に繊細でユーモアに溢れた交響詩で、それを見事に表現していた。音響的にも席の不満なし。

そしてメインは、プロコフィエフのバレエ音楽「ロメオとジュリエット」(ソヒエフによる第1〜第3組曲から11曲を選んだ抜粋版)。これは、昨日に続く2日目ということもあって、N響が恐るべきヴィルトージティを発揮し色彩感とド迫力を見せつけた演奏だった。爆音の凄さ、弦楽器の早いパッセージの見事な粒立ち、抒情的な旋律の印影の美しさなど文句のつけどころがない。これこそソヒエフの本領発揮と納得した。席はR7-4というS席7600円だったが、プレコンサートの弦楽四重奏曲演奏ではちょっとモゴモゴしていて不安だった音響も全く気にならない素晴らしい響きで大満足だった。ソヒエフのとんでもない実力を実感したコンサートだった。


また2曲で8分と45分の合計53分の休憩なしコンサートだが、不満は一切なし。むしろいつも20分の休憩が長いと感じる私のような音楽ファンには有り難いスタイルのコンサートだ。


ソヒエフは、ロシアのウクライナ侵攻で、2022年にモスクワのボリショイ劇場音楽監督とフランスのトゥールーズ・キャピタル国立管弦楽団音楽監督を辞任。現在はフリー。理由は「愛するロシアと愛するフランスの音楽家のどちらかを選ぶというのが不可能だったから」。こういう有能な働き盛りの指揮者をフリーにしてしまうのだから、

戦争は罪作りだ。もうそろそろ終わりにしてほしいものだ。


演奏会後に、聴衆、オーケストラの両方から喝采を浴びるソヒエフ。最近一部のオーケストラでは

演奏後の写真撮影を許可している。