待ちに待ったザ・シネマによるアキ・カウリスマキ監督(1957〜)作品特集の第2弾「コントラクト・キラー」(1990年 1時間30分)をTV録画して早速見た。

ストーリーは以下の通り。

フィンランドのアキ・カウリスマキ監督によるサスペンスコメディ。ロンドンの水道局で働くフランス人アンリ。突然解雇された彼は自殺を図ろうとするが死にきれず、新聞広告で知った殺し屋コントラクト・キラーに自分の殺害を依頼する。しかしその夜、彼はカフェで出会った花売り娘マーガレット(マージ・クラーク)に恋をしてしまい……。主演はフランスの名優ジャン=ピエール・レオ(1944〜)。元ザ・クラッシュのジョー・ストラマー(1952〜2002)によるバーでの演奏シーンも必見。

え、この主役はジャン=ピエール・レオじゃないのか!え、バーでギター弾いてるのジョー・ストラマーじゃないの?という具合いに、オールドファンには応えられない映画なのだ。昨年12月に日本公開されたカウリスマキ監督「枯葉」の公開記念で旧作が映画館やTVで上演されているのだ。2017年に一度監督引退したカウリスマキだが、「枯葉」で復活したのである。この「コントラクト・キラー」は1990年公開の映画だった。


殺し屋(ケネス・コリー)と花売り(マージ・クラーク)

独特のカウリスマキ調という映画を、ここまで全く見ないで来てしまった。あ、このタッチは、スウェーデン映画のロイ・アンダーソン監督になんとなく似ているじゃないか。もちろんヒューマンなタッチはヴィム・ヴェンダースとまず通底するし、ロベール・ブレッソンやジャン・ルノワールの厳しさも垣間見られる。ドタバタ感が満載の笑いのタッチならチャップリンがすぐに浮かんでくる。小津安二郎の影響も言うまでもないだろう。カウリスマキはかなりの映画マニアなのがよく分かる。


マージ・クラークとジャン=ピエール・レオ


もちろん、映画マニアが過去の名作のイイとこ取りしているだけの映画ではない。ちょっとヴェンダースにも感じるヒューマンな甘ったるさが気になるし、かなり都合よくストーリーは展開していくのだが、「で、それがなにか?」というオシの強さがあるのだ。それにキャスティングの見事さを言わなければならない。こんな素晴らしい映画監督を知らずにここまで生きてきた自分を恥じたい。


アキ・カウリスマキ監督


労働者3部作(「パラダイスの夕暮れ」「真夜中の虹」「マッチ工場の少女」)のTV放映が近々にあり、これが楽しみだ。いやあ、アキ・カウリスマキ監督に完全に胸ぐらを掴まれた!なおアキ・カウリスマキ監督には、敗者3部作、港町3部作(難民3部作)というシリーズもある。全制覇したいものである。