シベリウスのスペシャリストとして知られるフィンランド人指揮者オスモ・ヴァンスカが都響(コンサートマスター:矢部達哉)を指揮してシベリウスの交響曲第5、6、7番を指揮するコンサートを聞いた(10月30日月曜日19時、東京文化会館)。

コロナ禍で延び延びになっていた初共演ということらしい。ラハティ交響楽団との伝説的来日公演や読響との名演が知られているヴァンスカ(1953年2月28日生まれの70歳)だが、私は初めて聞く指揮者だ。

そのラハティ交響楽団や長く常任指揮者を務めたミネソタ管弦楽団とのシベリウス交響曲全集の録音も聞いたことがない。予習はカラヤン、ベルグルンド、ラトルの演奏をyoutubeで聞いた。いずれも精妙かつ劇的な名録音で、都響が初共演でどこまでやれるのかと不安と期待があった。管楽器と弦楽器のマリアージュはブルックナーやマーラーなどよりもかなり難しい。それにあまり洗練されても曲の本質から外れてしまう嫌いがある。難易度は高い。

私はブルックナーやマーラーほど、シベリウスの交響曲を聞きこんで来たわけではないが、シベリウス・オタクというのがいるようだ。

演奏の曲順は、番号順だった。5番が一番盛り上がるから、5番が最後かなとも思っていたが、奇を衒わないで番号順。


p.s.2015年2月17日に尾高忠明指揮札幌交響楽団の東京公演で5、6、7をサントリーホールで聞いていた。また2021年6月5日にサントリーホールで井上道義指揮N響でベートーヴェン交響曲第3番「英雄」の前半でシベリウス7番を聞いていた。


最初の5番では、冒頭でホルンが音程を外して不安定のままスタート。尻上がりに復調したがどうも今ひとつ。結尾がかなり強烈な強奏。

休憩後の6番は、哀愁が漂う冒頭はさほど気持ちを込めずさらりとした開始。もう少し繊細な表情が欲しい気もしたが、シベリウス感は十分に出ていた。この曲、あれ終わったの?という終結なのだが、今回は演奏設計がいいのか、しっかり終わった感が出ていた。

最後の7番は、調子が上がって来た。かなり劇的な演奏だ。管弦のコンビネーションも上々。コーダが念を押すような、見栄を切るような強烈な終わり方で盛り上がった。シベリウスの幽玄な世界ではないが、こういうやり方もあるだろう。かなり劇的な演奏に変わっているのではないだろうかと思う。

ツイッターでは先週の金曜日からプローべ開始というから演奏レベルはまあこんな感じではないかしら。ヴァンスカはシベリウス・スペシャリストとしての面目は十分に保った。



サラステやサロネンなどがシベリウス・アカデミーの指揮科ヨルマ・パヌラ教室の同級生だというヴァンスカ。その前はヘルシンキ・フィルでクラリネット奏者だったというキャリア。なんか頑固オヤジ風の風貌である。