TV放映を録画していた映画「シャンドライの恋」(1998年 ベルナルド・ベルトルッチ監督  1時間34分)を見た。クラシック・ピアニストと黒人女性の恋という内容と尺が1時間34分ということで見たのだが、見終わってから知ったが、監督があのベルトルッチ!「え、この映画がベルトルッチ監督なの?」と疑問に思うような不思議なタッチなのだ。スタッフを調べると、撮影がいつもの巨匠ヴィットリオ・ストラーロではなくて、ファビオ・チャンケッティだった。撮影監督が変わるだけで映画の質がこんなに変わるものなのか。

ローマが舞台で、シチュエーションがなかなか面白い。ヒロイン(タンディ・ニュートン)はアフリカから逃げて来た政治犯で住み込みの家政婦をしながらの医学を学び、アフリカで投獄された政治犯の夫の釈放を待ち侘びている。その家の主人はイギリス人クラシック・ピアニスト(デヴィッド・シューリス)。叔母から遺産とローマの家を相続して住んでいる内向的な男だ。映画はその2人の不思議な関係を描いている。アフリカ・カルチャーとヨーロッパ・カルチャーの不思議な交流がテーマだが、ヒロインを演じるタンディ・ニュートンが素晴らしい演技とキュートな魅力を発揮している。


なかなかの佳作である。ベルトルッチ得意の長編ではないし、濃厚な退廃的性愛もないが、これはこれで魅せる映画になっている。ストラーロとは違うがカメラワークも美しい。モーツァルト、バッハ、ラフマニノフ、ベートーヴェンなどのピアノが流れるのも実に心地よい。原題の「Besieged」は「囚われて」という意味だ。

ただし、映画の結末は絶対に話せない。知りたければ見て欲しい。なかなかの結末だ。