なぜこの映画を見に行ったのか?たぶん映画雑誌でこの主演女優ジュリー・クリスティをみて一目惚れしたのではないかと思う(笑)。
女優だから美人なのは当たり前なのだが、これほど「女優」面の女優はそうそういないのではないだろうか。目力がハンパないのだ。
映画では17歳の学生も演じている。
製作はイタリア人の大プロデューサーのカルロ・ポンティ。ポンティは、出資者が出資の条件に挙げた「アラビアのロレンス」(1962年)の名監督デヴィッド・リーンのところに出向き監督を依頼。さらに自分の妻だったソフィア・ローレンを主役のラーラに推した。リーンは監督は引き受けたのだが、ソフィア・ローレン起用案は一蹴。そりゃそうだよ(笑)。「主役のラーラは17歳の処女を演じなきゃならないし、長身のソフィアはダメ」がその理由。
とにかく素晴らしい演技なのだ。リーンの演出力の凄さが分かる。ジュリー・クリスティは前作の映画「ダーリング」(1965年 ジョン・シュレシンジャー監督 2時間8分)でアカデミー賞主演女優賞を受賞しているが、芳紀25歳、すでにキャリアの絶頂期を迎えていたようだ。
その他ドクトル・ジバゴ役のオマー・シャリフ、その妻役のジェラルディン・チャップリン、ドクトル・ジバゴの兄役のアレック・ギネス、ラーラの夫役のトム・コートネイ、ラーラの処女を奪う中年金満弁護士役にロッド・スタイガーなど名優が勢揃い。さらにカメラがフレディ・ヤング&ニコラス・ローグの映画「アラビアのロレンス」の撮影コンビなのだ。さらに音楽もやはり「アラビアのロレンス」のモーリス・ベジャール。その「ラーラのテーマ」は映画音楽でも屈指の名曲だろう。リーン監督にとってはキャリアの二大傑作と言える存在なのだろう。
しかし、難点がある。19世紀末から第二次世界大戦後までのロシア&ソ連の半世紀を描いているから、当然のことながら尺が長い(3時間17分)。
上掲のように「二度と見たくない傑作」に挙げられたりしている(笑)。この気持ちはよく分かる。今回私も2日がかりで鑑賞。飲酒後に見て30分ほど寝てしまって巻き戻しをしたこともあった。
そして、50年前に見たと書いたが、ラストシーンとジュリー・クリスティの御尊顔以外はほぼ忘れていた。なかなか高校生には、ボリシェビキと白軍とドイツ軍の構図の理解が難しかったかもしれない。映画中、第一次世界大戦でのドイツ軍とのウクライナ戦線が重要な舞台になっている。ドクトル・ジバゴとラーラが偶然再開を果たすのだ。ロシアとウクライナの複雑な関係に思いが至る今日この頃である。
それはともかく、「ドクトル・ジバゴ」を見つけたら是非見ていただきたい。欧米の文芸大作映画の良い面が存分に発揮されている。あのスピルバーグは、映画を撮る前には、リーン監督の「戦場にかける橋」「アラビアのロレンス」「ドクトル・ジバゴ」を必ず見ているということからも作品の価値がわかるだろう。