フロックコートが定番化した指揮者のヴァイグレ

ベートーヴェンの交響曲といえば、かつては交響曲の王者、オーケストラ演奏会の主役だった。「だった」と過去形で書くのは、最近はそうではなくなっているように思うからだ。特に第3番「英雄」、第5番「運命」、第6番「田園」、第7番は、演奏機会が激減しているように思う。第9番「合唱付き」に関しては相変わらず12月に嫌というほどやっているから、たぶん作曲家別交響曲演奏回数では第1位の座を保って、帳尻はあっているのだろうから、正確にいうと3番、5番、6番、7番に関して、演奏回数が減っているというべきなのだろうが。また、地方公演ではベートーヴェンの交響曲はメインになることが多いような気はする。このあたり正確に統計をとっているわけではなく、あくまでも直感の話である。悪しからず。
こんなことを書くのは、NHKのクラシック音楽館で、セバスチャン・ヴァイグレ指揮読売日本交響楽団(以下読響)の演奏会が放送され、ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」が演奏されていたため。ヴァイグレは、今年4月からカンブルランの後任として読響の第10代常任指揮者に就任している。就任記念演奏会のブルックナー交響曲第9番はサントリーホールで実演に触れたが、これがなかなかの演奏だった。それで、このTV番組も録画して聴いているのだが、久しぶりにベートーヴェンの「エロイカ」を聴くこともあって、実に素晴らしい。ヴァイグレは、ドイツの伝統を受け継ぐ指揮者だというのがよく分かる。部分的には楽譜の取捨選択だろうが、「おや?」というのが2、3カ所あるが、まあ許容範囲。テンポは早め。この黒のフロックコートを着た58歳の指揮者は、譜面を置いて指揮したのが意外だった。まあ、すでにベートーヴェンというのは、すでに普通の作曲家なんだろうなあ。読響も大熱演で見事な演奏。
それにしても、改めて書くのも憚られるが、この「エロイカ」交響曲は、本当に素晴らしい曲だ。
この日は小森谷巧(59歳)、日下紗矢子(40歳)の2人コンサートマスター体制
松坂隼首席(写真右)を始めホルンはノーミス