シーザーを誘惑するクレオパトラのシーン

10月から始まる新国立劇場の2019-20シーズンは大野和士・芸術監督体制の第2シーズンになるが3つの公約1.バロック・オペラ(「ジュリオ・チェーザレ」)2.ベルカント・オペラ(「ドン・パスクワーレ」)3.ロシア・オペラ(「エフゲニ・オネーギン」)の新制作が上演される。特にバロック・オペラは同劇場22年の歴史で上演がなかったわけで何を最初に取り上げるのか、興味津々だったが、ヘンデルの「ジュリオ・チェーザレ」(「ジュリアス・シーザー」)が選ばれた。

それでTV録画してある2012年5月25日、27日のザルツブルク聖霊降臨祭音楽祭の公演を予習がてら視聴してみた。これが実に素晴らしい公演でそのまま新国立劇場に持ってきて欲しいぐらい。バロック・オペラ上演の最大の問題点は、長時間の上演時間(「ジュリアス・シーザー」では4時間20分)だろう。それと歌の繰り返しが多い点。これは演出がかなり面白くないと、まず退屈する。その点この聖霊降臨祭音楽祭公演は、モーシュ・レゼール&パトリス・コーリエの演出が素晴らしい。現代に時代背景を移し、コミカルであからさまなSEX描写とグロテスクな表現が時間を忘れさせてくれる。
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トローメオ王は「プレイボーイ」を見てオナニー
父(ポンペーオ)を殺された息子セストは復讐を誓いダイナマイトを体に巻きつける

バロック・オペラの上演の難しさは、カウンターテノールのかなり必要なことだ。この聖霊降臨祭音楽祭では、シーザー役のショル、セスト役のジャルスキー、トローメオ王役のデュモー、ニレーナ役のコヴァルスキーなどスターが勢揃い。加えてクレオパトラ役はバルトリ、コルネリア役はオッターという2枚看板。そしてアントニーニ指揮イル・ジャルディーノ・アルモニコの演奏が実に見事。
最後のシーンは、メデタシメデタシのパーティシーンだが、ちょっと一工夫してある。とにかく最上級の賛辞を贈りたい公演だ。さあ、新国立劇場の「ジュリオ・チェーザレ」(来年4月7日、11日、12日)が楽しみになって来た。