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坂口安吾『堕落論』角川文庫
「堕ちる道を堕ちきることによって、自分自身を発見し、救わなければならない」というこの書は 『白痴』の前、「第二次大戦後の混迷した社会に、戦前戦中の倫理観を明確に否定して新しい指標を示した」 という事です。
他に「恋愛論」「エゴイズム小論」などエッセイ十二編を収めています。


「私ときわめて親しかった姪の一人が二十一の年に自殺したとき、美しいうちに死んでくれてよかったような気がした。」
「未完の美は美ではない。その当然堕ちるべき地獄での遍歴に淪落自体が美でありうる時に初めて美とよびうるのかもしれないが、―」
「私は戦きながら、しかし、惚れ惚れとその美しさに見とれていたのだ。―戦争中の日本は嘘のような理想郷で、ただ虚しい美しさが咲きあふれていた。」