著者は八ヶ岳在住で、ライター兼編集者の穴澤賢(あなざわ・まさる)さん。

犬グッズを扱うブランドを立ち上げているそうだ。

著書は『犬のために山へ移住する』(草思社)。

 

穴澤さんは八ヶ岳にある敷地300坪、古い山小屋付きの別荘を200万円で購入したのは2017年のこと。

ドッグランを強くイメージした選択だった。

 

その古い山小屋には、ご多分に漏れず残置物が多数あった。

だが、そのことよりも別荘地に魅かれたのは、インフラ整備面だった。

いわゆる「ポツンと一軒家」の場合、水や電気などに不安がある。だが、別荘地であれば基本、大丈夫だろう。

 

とはいえ、

かなりの修繕が必要だった。

山小屋への木製階段を作り変えるための費用が30万円。

さらに、直面したのが古い山小屋の屋根からの雨漏りの酷さであり、

その張替えに230万円を費やした。

 

ちなみに不動産業界では、築古物件を吟味する場合、

まず、建物の基礎(土台)部分を見る。

ついで、屋根という順序だ。

 

ここに、やや疑問が生じる。

物件を内見した際、不動産業者から屋根部分の雨漏りについてきちんと説明を受けただろうか、という疑問だ。

買主がマイホーム・ハイの状態にあると見て取ると、不動産業者はデメリット情報を隠しがちだ。

それは早く取引を成立させるための思惑であり、契約書面には、

「現況のまま(買主)に引き渡す」

と記入し、あとで文句を言わせない予防線を張っておく。

なので、不動産業者は「怖い」「怪しい」などと得てして言われて当然だろう。

 

浴室と洗面室の改修で150万円。

 

さらにトイレ改修の費用もかなりの金額だった。

それまで汲み取り式だったが、都会育ちにはおよそ耐え難い。

これを合併浄化槽という仕組み(下水道がない地域での方式)に変更するため150万円を出費し、補助金50万円が出た。

 

穴澤さんは当初、2拠点生活を考えていたようだ。

というのも物件は標高1450メートルの地にあり、真冬はマイナス15℃ほどになるからだ。

だが、愛犬たちが現地を大いに気に入った様子などから移住を決意。

その結果、

FF式ストーブ(寒冷地向け)を採用して30万円

薪ストーブ(煙突工事込み)140万円

薪を準備するための道具などに80万円

など。

 

また、室内リフォームに合計500万円ほど出費したそうだ。

その他、物件購入およびすべてのリフォーム費用を合算すると1600万円ほどになったとのこと。

これらの資金は以前、所有していた家の売却によって得たものを含めて投入したということである。

 

穴澤さんは50代なかばである。

2017年に築50年ほどで取得したとのことなので、すでに築年数は60年に向かっている。

 

では、今後さらに20年ほど住み続けるとした場合、どうなるだろうか。

私の論評はこうだ。

現地はクルマ必須の地域である。運転免許は欠かせない。

免許更新時、視力検査などは大丈夫か?

 

次に記すのは私の分類法である。

都会>トカイナカ(都会+イナカ、森永卓郎さんの指摘)>半イナカ>ドイナカ

 

都会から半イナカまではクルマ無しで暮らせる生活圏とした場合は、ドイナカは最もハンディキャップがある。

クルマ運転が必須であり、なおかつ医療施設までの距離が遠い。

 

どこかの時点で再移住を検討するかもしれない。

その時期を仮に20年後とする。

 

すると物件はほぼ築80年である。

もし売却するとして、この別荘地の周辺はさらに閑散としていることだろう。

仮に1000万円で売り出したとしても、

日本の人口の大幅減少もある。

およそ300万円から400万円程度で取引されるかもしれない。

 

物件の価値は4分の1に下がったとしても、所有者には、かけがえのない30年であることに変わりはない。

 

都会を除き、日本の土地神話は消滅した。

土地の値段は、ほぼタダ、

その立地上の建物に、なにがしかの価値があるか。

 

半イナカ、ドイナカは、そう見るべきであると私は思っている。