前回、記した築古の2階建て物件を売却する時がきた。
この物件は借地権付きだ。
その売却には地主の承諾が必要となる。
そして契約内容にもよるが、地主への支払金が生じる場合が少なくない。
しかし、ここでは詳細に触れず、話を先へと進める。
最初に売却依頼を持ちかけたのは大手のM不動産だった。
だが、断られた。
その理由は、建物の立地にあった。
建物の背後には擁壁(ようへき)があった。
これは土地の高低差により、土砂が崩れるのを防ぐための壁である。
その擁壁がかなり老朽化していたため、
危険と判断されたからだった。
次に売却依頼をしたのは地元のF不動産だった。
F不動産の若手営業マンの運転で物件の内見をしてもらい、
その行き帰りにおのずと雑談した。
その話の流れの中で、私はこう告げていた。
「この10年間で、売買はザッと9回目ぐらいですかねぇ」
彼らの職場(店舗)に戻った。
F不動産は私の物件の仲介を引き受けた。
しかし、である。私にはどことなく漠然とした不安があった。
「専任媒介(契約)は2か月間にしてもらえますか」
私は担当の若手営業マンに告げた。
最長で3か月間の契約を結ぶことができるルールだが、2か月間にとどめたのは用心したかったからだ。
若手営業マンは奥のスペースに引っ込み、戻ってきた。
専任媒介契約の期間は、一方的に3か月間に変更されていた。
何だ、これは・・・
その3 突然、現れたサイコパス店長
奥から店長が姿を現した。
そして、彼はいきなり私に驚くべきことを告げた。
「無免許で物件売買を反復継続することは(宅建)業法違反ですよ」
「300万円以下の罰金、または3年以下の懲役もあり、その両方が科される場合もありますから」
たちまち察した。
「この10年間で、売買はザッと9回目ぐらい」
という私の話を店長は、若手営業マンから聞きおよんでいたのだろう。
私はこれまで、このような人間に会った経験がない。
いきなりの威圧に、
私は、仲介契約じたいを破棄すればよかったのかもしれない。
今なら、そうする。
のちに調べたところ、
「業」として不動産売買を重ねた場合は確かに宅建免許が必要となる。
だが、私がやっていたのは1年間に一度弱、
しかも営利目的ではない。
ならせば、多少の利益が出たとしても仲介料で吹き飛んで行く。
これを「業」と呼び、
断定して屁理屈をこねる歪みっぷりが痛すぎる。
今なら、いくらでも言い返してやる。
しかし、当時の私は若手営業マンにこう告げるのみなのだった。
「やはり、(専任媒介契約は)2か月間に戻してください」
これだけは譲れない、という意志と共に。
それから2か月間、何事もなく過ぎた。
担当の若手営業マンが私の当時の住まいにやってきたが、
契約の更新など頼むはずもない。
彼は恐縮したような低姿勢で立ち去った。
のちに私は、あのような店長をサイコパスと呼ぶことを知る。
それは宅建士の資格取得をめざし、
勉強していた時のことだ。
さる講師がユーチューブで、不動産業界にはサイコパス人間が一定数いる、と語ったからである。
これが意外というか、業績を上げるそうである。
いわばイソップ寓話の「北風と太陽」の北風タイプでもあるだろう。
上昇志向が強く、オレ様タイプの人。
なぜ、連中が上手くいくかといえば、
多くの顧客は気弱なタイプであるから、らしい。
結果、サイコパス野郎の虚言に引きずられてしまうのだ。
今の私なら、秒速でサイコパス人間はお断りだ。
じかに経験しなくても、サイコパス野郎を知る手がかりはある。
アメリカにトランプという男あり。
日常的に虚言を弄して脅し、現実を捻じ曲げる。
だが、
この男にも一定の支持者がいる。
安定だけを求めて生きてきた人々は危険人物に騙されやすい。
さて、
私はあの物件の仲介をC不動産に依頼することにした。
担当者は70代とおぼしき年輩男だ。
その4 塩づけ爺(じい)
この男の困った妄念は、かなりの時間を経過したのちに判明する。
それは本稿の冒頭部分で記した、
建物の背後の擁壁(ようへき)について、である。
売主である私とは何ら相談せず、独自の思い込みで突っ走っていたのだ。
とはいえ、ごく、のんびりと・・・
のちに判明する爺の妄念、それは別人宅である背後の擁壁(ようへき)を工事することだった。
したがって私の物件とは直接、何ら関係がない。
私がその物件を買ったように、次の買い手を探してもらいたい。
この仲介を依頼しただけだ。
だが、やがて浮かびあがってきたのは妄念爺の独走だった。
それは別人宅である背後の擁壁(ようへき)を工事をさせ、その後に売却すべき、というものだった。
売り出しからほぼ1年間が過ぎた。
何度も売り出し価格を値下げしてきたものの、塩づけのままだった。
私は、その「塩づけ爺」に詰め寄った。
擁壁の改修工事は、どこに頼むつもりなのか、具体名で答えてくれ
購入希望者の実情を明らかにしてくれ
塩づけ爺は渋々、答えた。
2件の申し込みが来ていたのである。
だが、塩づけ爺の独断で取引を止めていたことも判明するのだ。
もはや仲介業者を変えるべき、と判断した。
専任媒介契約を更新せず、
私は別の業者Aと新たな専任媒介契約を結ぶことにした。
出直しである。
すると、不思議なことが起きた。
何と、新たな業者Aに連絡をしてきた人物がいた。
その人物は、私の売り出し中の物件を買いたいと告げてきたのだ。
事情を聞いて判明したことがある。
その人物は、かつて塩づけ爺の案内で私の物件を内見し、
大いに気に入ったそうだ。
だが、塩づけ爺に売買を止められていた。
あの擁壁の改修工事がまだ実現していないためである。
その人物はやはり買いたいと願い、再び塩づけ爺の会社を訪れたそうだ。
その際、
私はすでに媒介契約を更新しておらず、
別の業者Aと専任媒介契約を結んでいることを耳にしたそうだ。
それを手がかりに、
やっと一本の線で繋がり
売買契約が成立する運びとなったのだった。
【まとめ】
無知に付け入る「中小」不動産業者との現場報告は、ひとまず終了です。
振り返ると、
無知に付け入る不動産業者たちへの静かな怒りが湧いてきます。
これらの記事は何千万円もの物件をローンを組んで購入される方々に向けた内容ではないと思います。
私が願うのは、ローンを組めるかどうか瀬戸際の人々、
ローンは無理かも
と、諦めかけている人々へのメッセージです。
絶対に損をしないでね、と。
かつて私は長年、フリーランスで仕事をしており
銀行や信金に相手にされず、
やがて知り得た日本政策金融公庫からの融資で、やっと物件購入の第一歩を踏み出した一人です。
だからこそ、
持ち家をめざす人を支えたいと強く願っています。