それは今年3月後半のことだ。
私は埼玉県内から千葉県南房総市への引っ越しに伴い、居住していた埼玉県内の中古分譲マンションの売却を依頼した。
依頼先は誰もがテレビCMで知る超大手不動産会社で、
専任媒介契約である。
その社員たちは表向き、皆さん「紳士」である。
だが、実態は。
以下にその詳細(素顔)を記す。
その旧知の担当者Aに専任媒介契約を依頼する際のこと。
振り返れば、私はあまりにも正直すぎた。
物件売却の依頼にあたり、不動産仲介業者に登記簿情報などを含め、さまざまな物件情報を伝えるのは決まり事だ。
その際、私は当該マンションの自主管理組合の事情を伝えた。
内容はこうだ。
私は以前、当該マンションの管理組合理事長を一時、務めていた。
動機は、当時のマンション管理に不信を抱いたためだ。
それまで理事長だったという人物は、カトウという管理員にすべて丸投げする無責任極まりない男であった。
しかも、管理員じたいも怪しい・・・。
さて、定期総会がやってきた。
コロナ禍が明けた久しぶりの定期総会に私は出席し、カトウ管理員(以下、カトウ)に会計に関する質問を続けた。
その中で、カトウが管理組合の預金通帳2通を常に保持している、ということも明らかになった。
だが、当日、カトウは預金通帳2通とも持参しなかった。私は会計報告の内容と預金通帳を照合するため持参を求めた。
さらにカトウを問い詰めると、長年に渡る管理組合の過去の預金通帳はすべて破棄したと告げたのである。
過去の預金通帳をすべて破棄した、とは、驚くべき事態である。
事態は紛糾し、定期総会は時間切れ延長となった。
日を改めて定期総会を再開した。
ここで、さらに衝撃的な事態が明らかになる。
何とカトウは、最新の預金通帳2通を紛失したと告げたのだ。
そのため交番に紛失届を提出した、と称し、「紛失届」を出してきたのだ。
こうして管理組合は、過去の預金通帳を含め、すべての預金通帳を失ったことになる。
カトウによる証拠隠滅の可能性大である。
カトウが管理組合の管理費、修繕積立金を使い込んでいた疑いがいよいよ強まったことになる。
ほぼ真っ黒ではないか。
この異常事態のもと、私は管理組合理事長になったのだ。
カトウが使い込んだと推定金額を把握し、まずは民事上の返還請求訴訟を提起してはどうか、と私は理事会に提案した。
まずは直近の期間から始めたらどうか、と。
理事会。
言うのは簡単だが、その実態は、ほぼ理事長一任である。
なぜなら、理事長の責任は重いと受け止め、そういう役割を担いたくない人たちが理事にとどまる。
理事を引き受ける理由は単純である。
何かあったら、理事長に直接話を伝えやすい、という程度のことだ。
自己保身の一種である。
さて、この理事会が何とも面倒くさかった。
私は時効を考慮し、早めにカトウを提訴すべきと考えていた。
返還請求提訴には弁護士、司法書士も不要、と私は見込んでいた。自分で訴状を書いて裁判所に行こう、と。
直近の1年間からスタートしてもよい。その後、順次さかのぼることで時効を防ぐという意味だ。
だが、この方法に対し、不貞腐れる理事が一人いた。
仮名で「オヤオヤ」とする。
「オヤオヤ」という男は、まずはカトウの使い込みの全体像を調べるべきだ、という考えの持ち主らしかった。
しかし、そうなると10年間におよぶかもしれない。
ただし、推定値である。
この男の理事の「こだわり」には時効という概念が欠落している。そのため、この男の気持ちをうまく伝えられないが、ともかく「オヤオヤ」は持論に固執し、公然と不貞腐れ続けた。
これではダメだ。撤収しようか・・・
ほかの理事たちの反応はというと、困惑するばかり。
私はさらに失望し、理事長を降りた。
すると、あの不貞腐腐れ男が理事長に選ばれた・・・。
そして、この男のやったことに私はただ呆れた。
この男はアンケート調査を管理組合の組合員対象に実施したのである。
カトウを警察に訴え出るか、
民事訴訟をするべきか、
組合員の皆さん、どう思いますか?
と問うた。
バカか、お前。
理事会というのは執行部だ。
執行部は方針を打ち出す役割がある。
その方針をまず組合員たちにしっかりと説明し、支持されるかどうか、これを問う立場にある。
それから1年間以上の時を経たものの、事態は何も動かなかった。
票が割れたからだ。
そんなの当たり前だろ、何しろアンケートである。
その後、私はさらに驚かされた。
何と、この「オヤオヤ」という人物は、自己所有の部屋を売却して転居するというのである。
おのずと理事長退任でもある。
たまたまそのタイミングに、私は冒頭で述べた大手不動産会社の担当者Aに私の部屋の売却を依頼したのだ。
前置きが長くなった。本題に入ろう。
ポイントは2つだ。
その1 担当者Aは「オヤオヤ」に直接連絡し、まもなく理事長を降りる、と聞きおよぶことになった。
その2 担当者Aは、私を通じて以前の管理員が管理組合の資金を使い込んでいた事情を聞き知っていた。
この2つである。
それからほどなくして、担当者Aは社内で異動することになった。そのため担当者はBに交代した。
やがて、最初に売却依頼をしてから50日が過ぎ去った。
だが、内覧希望者はずっとゼロが続いた。
あまりにも反応がない。
そろそろ売り出し価格を下げたほうがよいのではないか?
迷いが生じた。
そこで私は担当者Bに自分から相談の電話をかけた。
だが、彼は即座に言った。
「まだ値下げしなくてよいと思います」
何で!?
よく分からない会話のあと、担当者Bは気を許したのか、こう私に告げた。
「お問い合わせは、いくつかありました」
「ただし、(当該マンションに)理事長が不在であることと、過去に使い込みがあったことをお伝えしますと、内見に至りませんでした」
はぁ?
担当者Bによる衝撃の内容だった。
まず、理事長は不在ではない。新たなの理事長に交代しているのだ。
つまり、明らかに事実に反する。
問い合わせが電話かメールかはともかく、最初から2つのデメリット情報を相手側に告げたことに私はショックを受けた。
私は落ち着こうと思いながら続けた。
「こういう2つのデメリット情報を最初に聞いて、それでも人は内見を希望するものでしょうか?」
せめてもの言い方だった。
すると、担当者Bは平然と言った。
「でも、重要事項説明書には記しますからね。最初に言わないで、あとでトラブルになるのは避けるべきですから」
「しかし、理事長は不在ではありません。切れ目なく新しい理事長に交代しているんですけどね」
「そうでしたか」
悪びれる様子もない。私は一種の恐ろしさを感じた。
なるほど、そういう理由で内見ゼロだったのか。
こいつ、もうムリという絶望感に、私は見舞われていた。
管理員に使い込みをされ、さらに理事長さえもいない、と聞けば普通、人は引いてしまうものだろう。
しかし、実態は管理組合の立て直しに取り組んできたことは間違いない。まず何よりも会計の完全明朗化である。
「オヤオヤ」が無能であっても、私の理事長時代に会計立て直しのルール作りはやっていたのだ。
管理員に使い込まれたというデメリット情報を伝えるのみで、それを立て直して今に至るという情報を出さない。
その態度に恐ろしさを禁じ得ないのだ。
まして、理事長がいない、と事実無根の情報さえ断定的に伝えていたのだ。
何やら陰湿な悪意さえ感じられる。
もはや完全アウトである。
ではなぜ、担当者Bは、あのようにデメリット情報を伝えたのだろうか。
担当者Aおよび担当者Bに共通するのは、「オヤオヤ」が退任し、その後任はどうなるかという疑問の欠落である。
また、管理員に使い込まれたあとの取り組みへの関心の欠落である。
何とも恐ろしい人たちだ。
これがテレビCMで知られる大手不動産会社の一面であることは、ほとんど知られていないに違いない。
さて、私はどうしたか。
その翌日、私は次のメールを担当者Bおよびその上司である副センター長に充てて送信することにしたのだ。
文面はこうだ。
一身上の都合により、専任媒介契約を解除します
そして日付、住所、名前を記しておしまい。
グダグダとあれこれ理由をつける必要など一切ない。
もともと、3か月間の専任媒介契約をしていた。
そして、すでに50日間が空しく過ぎ去っていた。契約終了まで残る40日間を我慢などできない。
「瞬殺」するだけだ。
民法の規定により契約は自由解除できる。
実際、不動産会社と専任媒介契約を結んだものの、その後の対応に不満や不信感を抱く人も少なくない。
その場合、我慢などせず、
上記の一文により「瞬殺」するのが最善策だろう。
案の定、先方の大手不動産会社から私宛にメールでこう返事がきた。
「承知いたしました」
では、バイバイ。
二度と頼んでやるものか。
あとは、別の不動産会社に売却を依頼するだけだ。