昔から自己啓発書や精神世界系の本を読むのが好きなんですが、時々、文章がやたら上から目線の本があって読んでいてイラっとくる時があります。「あなたは完ぺきな存在なのです!自分を愛しなさい!」とか、「恐れを捨てなさい!」とか言われても、「そう言うあなたはどうなの?」とか思っちゃう。

よっぽど厳しい修行をして悟りを開いたお坊さんとか修験者ならともかく、普通の生活をしている限り、たとえどんなに自己啓発に励んでいても、スピリチュアルを取り入れていても悩みはあるはず。私は悩みとは無縁なのです!みたいな上から目線の本は、なーんか信じられないんですよね。

 

その点、脚本家の旺季志ずかのエッセイ、「誰かのためも大切だけど、そろそろ自分のために生きてもいいんじゃない?」(通称「そろ生き」)は、作者が自ら苦しんで得た生きる知恵をシェアしてくれている感じがしてすんなり心に響きます。

本には旺季さんが20年の脚本家生活の中で、「人の心を照らしたい」という思いで書いたドラマのセリフが収められています。それらのセリフは、作者自身のどん底から立ち直った体験がもとになっていて、それにまつわる体験やどう乗り越えたのかという解説が書かれています。

 

中でも一番、私の心に響いたのは、「臆病なまま進め」という言葉。私は一見ポジティブそうに見られるのですが、実は何かと小さなことを気にしてしまうところがあって、そんな部分を直したい!と長年思っていました。しかし、「もう、ビビリなまんまでいいんじゃね?」という勇気というか開き直る術をこの言葉にもらった気がします。

 

旺季さんは実績もあるベテランの脚本家でありながら、あえて吉本坂46のアイドルオーディションに挑んだチャレンジャー。周りからの心無い声に悩んだこともあったと言います。ものすごい恐怖心と戦いながら5次審査まで挑戦を続け、見事に合格を勝ち取った、そんな人が書いた本だからこそ信じられます。

人生も順風満帆というわけではなく、女優を志して挫折したり、婚約者と共依存に陥ったり、子供が不登校になったりとさまざまな壁にぶちあたり、その都度悩みながら道を切り開いてきた人の言葉には説得力があります。

 

この本にはいろんなセリフが収められているので、きっと人によって心に響くポイントが違うと思います。その時の境遇によっても違うかも。少し前に読み終わった本ですが、もう一度読み直してみようかなあと思います。

 

表紙がオトナな感じなので、手に取ったとき、「ど、どんなオトナの話が書いてあるんだろう?」とドキドキしましたが、中身はとても親しみやすかったです。