昨日の朝日新聞の文化欄に字幕翻訳の記事が載っていたということで、実家の父親が記事をわざわざ写真に撮って画像をメールで送ってくれました。
記事のサブタイトルは“「職人技」行間読み短く的確に「意訳」”。なんだか情熱大陸みたいでカッコいい!華やかな映画業界の中で裏方として頑張っている翻訳者の仕事をクローズアップしてくれるのはうれしいことですね。記事の中心は「セリフは直訳ではなく、1秒に字幕4文字に納めるよう、専門用語やギャグをどのように処理するかは翻訳者の腕にかかっている」という内容。「字幕とセリフの言ってることが違うじゃないか!」といきりたっている人をネットの書き込みなどで見かけることがありますが、この記事にのしをつけて送りつけてやりたい!もし一字一句セリフどおりに字幕をずらーっと出していたら、画面が文字で埋めつくされてしまいます。私も翻訳の仕事を始めるまえは得意げにそんなことを言っていましたが、過去の自分に説教してやりたいものです。
記事には「パイレーツ・オブ・カリビアン」の訳例が紹介されていて、うまい訳だなと思ったので、抜粋してみます。原文は、
Think old Captain Jack’s washed out, ay? I ‘ve not had a wash in years.
これを直訳すると
「あいつら、かつてのジャック・スパロウ船長は色あせたと思ってるのか?長年風呂には入ってないのにな」
このセリフの1文あたりの尺が2秒ほどらしいなので、字幕は全部で16~18文字。それが字幕になると
「俺の栄光も泥まみれ
風呂に入ってないし」
となるわけです。動詞のwash outの2つの意味「色あせる」と「体を洗う」が見事にかけてあってお見事!こういうダジャレ系が一番悩まされるんですが、自分のボキャブラリーの引き出しからは「栄光も泥まみれ」なんて言葉は絶対に出てこないだろうなあとうならされました。
記事には他にも「忙しい現代人を飽きさせないよう、昔の映画に比べて今の映画は会話の速度が上がっている」と書いてありました。映画ではそれほど感じないのですが、確かにドラマでは弾丸のようにしゃべりまくる登場人物が多いように感じます。(翻訳しながら“あんたちょっと黙っててよ”と毒づくことも…)だから最近、吹替え翻訳の需要が爆発的に増えているんでしょうかね?
最近、自分の仕事の割合も7~8割が吹き替えになってしまいました。もともと映画を観るのは字幕派で、作業的にも1人でああでもないこうでもないと黙々と言葉を練りまくる字幕の方が好きなんですが、最近は字幕の仕事が減ってきて寂しい限りです。こうして記事を書いていると、あらためて自分は「やっぱり字幕が好きなのだ!」と思いました。吹き替えの楽しさも最近感じてきたので両方やっていきたいんですが、理想は字幕7割、吹き替え3割ぐらいですかね。今はすっかり逆転しているので、仕事以外のPTAの役員やらサッカーの役員やらが忙しい今年を乗り切ったら、来年は字幕の仕事を増やすべく営業活動でもしてみようかと考えています。
