五月病の君へ
5月は鬼門。研究室の同期が、大学院を退学するらしい。僕が仮面浪人をしようと思ったのも、5月だった。五月病だから気分が落ち込むのか、はたまた、それまでに見えていた周りの景色こそが虚構で、5月に入って改めて本当の負の側面が見えてくるのか。毎年、五月病ってこわいと思う。とりわけ今年は、コロナが尾を引いている。せっかく大学に受かっても、オンライン授業ではなかなか人間関係が広がらない。サークル活動もできない。バイト先にいたある学生は、都内の私大に受かっていたのに対面での授業が始まらないということで、それが始まるまで仙台に残ってバイトに励んでいた。結局、彼のバイト生活も一年間続くことになった。色んな人がいる大学という環境に身を置くことのいちばんのメリットは、それまでの自分の価値観の狭さに気づくことができるということだと思う。ふつうに地元の中学、高校へ進学していろんな人と会って話したところで、結局その人たちが過ごしてきた人生は、自分のと似ている。僕はよく地元の友達と「日曜日は親に連れられてジャスコ行ってたよな」というあるあるで盛り上がったりして、それが全国民の王道ライフスタイルだと信じて疑わなかった。けど、どうやらそういうわけでもないということが最近になって分かってきた。家族との仲のよさ、余暇の過ごし方、将来の自由度、勉強に対する考え方など、育った場所が違う人間が20歳前後くらいまで生きれば、それはもう幾重にも価値観が分岐する。そういう人たちとの関わり合いの中で、自分がそれまでに培ってきた価値観が一度壊れる。凝り固まっていた考え方がアップデートされる。そんな貴重な体験が、コロナ禍で失われている。受験期を通して培われた価値観は、思ったより頑固だ。アップデートの機会がなければ、どんどん自分の世界に閉じ込められてしまう。いま仮面浪人を考えている人、あと、現状に不安を感じてきた人。ネットもいいけど、違う価値観をもっている誰かに話してみたらいいと思います。今年の五月病は治りにくいらしいので。