家族 -3ページ目

豹変!?

イブに夫はやてに土下座してからしばらくはこれといった大きな動きはなかった。


小さな動きとしては、はやてに相変わらず迫ることと、


夫が家にいる間は帰りたくない!!
夫の顔も見たくない!!
と、はやてに言い、自転車のカゴに寝袋を積み、1日の殆どを家に帰らず外で過ごしていた、えりか。
そんなえりかがある日、


「男の人って誕生日に何が欲しいですか?」


と、はやてとその場にいた同僚に聞いて来た。


「なんで?」
「もうすぐ旦那の誕生日なんですドキドキ


あんなに夫を毛嫌いしてたのに、一体どうしちゃったの!?
でも、夫婦仲が良ければ、もうおれにつきまとわないだろうし、ああ良かったニコニコDASH!


はやては心底スッキリしていた。
しかも、えりかは1月中には退職すると言う。
パートから社員になりたいと、休みの日にまでわざわざ社員の後をついて回って迷惑を振りまいていた、えりか。
どういう心変わりか知らないが、こんなに喜ばしいことはない!!
やったー\(^_^)/


けれど…
『明日は明日の風邪が吹く』
という言葉通り、えりかの言動は風が吹くまま気の向くまま…

X'masに土下座

X'masイブ。
窓にステンシルをして、帰宅する夫はやてにツリーのライトが見えるように、カーテンを全開にしていた。
さきとすうは窓辺で遊んでいた。


そこへ夫はやてが帰宅。


部屋に入るなり、はやては
「もうやだよ~」と、言いながらへたれこんだ。


「「どうしたの?仕事で何かあった?」
「家の前にいたんだよ!!
「だれが??」
「えりか!!
「ええーッ!!ホントに!?


ついに、ついに、来てしまいました!!
っていうか、行動早すぎ!!
はやてがファミレスでモーニングしてから1ヶ月も経っていない。


「ななんで家わかったんだろう!?
「同じ会社で働いてるんだからすぐわかるでしょ?」
「だってみんなアイツが頭おかしいって知ってるから、ウチの住所なんて教えないよ!!


近頃ははやてが外回りから帰社するまで何時間でも、会社の外で待っているらしい。
自宅もはやてての後を尾けて突き止めたのだろうか。


「『あなたの子供を作らせてください』って土下座された!!帰らすのに15分かかったよ!!のりこがベランダに出てきたらどうしようってヒヤヒヤしたよ」
「へえ~すごいね」


「『明日になったら冗談のつもりだったって言ってもいいから!!』っていうから『冗談でも絶対無理!!』って突っぱねたけど」
「子作りって冗談で済むことじゃないのにねぇ。5人もいるんだから、新しく作る前にいまいる子を可愛がればいいのにね」
「欲しくて作った子供じゃないらしいからねぇ」
「欲しくて作ったわけじゃない子が5人もいて、なんでまだ作りたいんだろうね!?
「さあね、それより早くコタツ買いに行こう!!


そして、わたしたちはコタツを買いに行き、家族で新しい広いコタツでささやかなX'masをした。


小学生を筆頭に1歳児までいる幼子たちが、せっかくのイブに母もなく団欒もなく過ごしているのだと思うと、胸が痛んだ。


新しく子供が欲しいならまずいまいる我が子を大事にしてあげなよ!!
そう思うえりかへの憤りが、わたしの中で膨らんでいた…

略奪!?

夫はやては、同僚としての親切心から、えりかの離婚の相談に乗った。


社長や常務夫妻の他には、最近フィリピン人と結婚した中年社員がいるだけで、若手に既婚者は夫はやてだけ。
だからこそ、既婚者として相談に乗ったのだという。


初めはえりかの愚痴を聞くだけだったようだ。


それが何をどうしたのか、


「子供を作ってください!!
「わたしと子供を北海道に連れて行ってください」


なんて、執拗に迫るようになった。


あけすけな物言いをしながらも、


「はやての家庭を壊す気はありません」

と、言ったらしい。


おかしな話だ。
北海道に行くにしても、子供を作るにしても、わたしに隠してどうにか出来るものではない。
実行すれば必ずわたしにも知れる。
一体何をどうすれば、家庭を壊さずに成し得ると言うのか。


えりかにとって、わたしもうちの娘たちも最初から眼中ないのではないか?


既婚者子持ちのはやてのどこがそんなに良かったのか?
独身男を見つけた方が手っ取り早いと思うのだが。。

モテモテ

夫はやては営業職。
ただ、スーツを着て営業するような職ではないので、実にラフな格好をしている。
しかも寝癖を無造作にとかしただけの、天然無造作ヘアー(笑)


なのに!!


なぜかモテるらしい!?


今回より以前にも、お客さんの若妻から


『今後、暇(笑)な時などブラブラと新居までおしゃべりしに来て下さいませ』

なんてメッセージ付きで新居の住所と電話番号を渡されたりしてる。


わたしの友達で、偶然はやてのお客さんにも
「旦那さんサワヤカだよね~ニコニコ
と、言われる。


細いし、ブサイクではないけど、とりたててイケメンではないし、背低いし、寝癖で小汚い格好してるのに何故だろう!?

離婚

夫はやてが帰宅するなりイラッとした表情で言い捨てた。


「アイツ、マジ頭おかしいよ!!


!?
いきなりそう言われましても、一体誰のことを言ってるのやら。
ムカつくお客さんでもいたかな?


「もうウンザリだよ!!着信拒否にしてんのにすげーかけてくんだよ!!見てよ、ホラ!!みんなアイツに迷惑してんだよ!!すげーウザい!!


はやてが見せてきた携帯の着信履歴を見ると、えりかからの履歴が着信拒否されていくつか並んでいた。


同じ会社で働いてるんだから、着信拒否したって意味ないんじゃない!?
と、思う。


はやての話によると、彼女から離婚の相談を受けていたらしい。


離婚話が持ち上がった理由は、えりかの夫が、何度言っても避妊をしないことだと言う。
いまはえりかがピルを飲んでるらしく、夫と話し合って、夫がパイプカットすることに決めて病院まで行ったらしいのに、なんだかんだ言い訳をしてやって来なかったらしい。


えりかは夫の顔も見たくないから寝袋を持ち歩いて、夫が家にいる時間は家に帰らないらしい。
休みの日も、会社の誰かしらの外回りにくっついて歩いているとのこと。


「え~!?休みの日まで仕事してるの??」
「社員になりたいんだって!!だから一所懸命なところをアピールしてるんじゃないのプンプンあんなヤツ社員になんてしないよ!!


へえ~。また奇特な。
はやての仕事はきつい上に休みもなく、保障も薄いのに。


「『わたしと子供を北海道に連れてってください』とか『わたしと子供作ってください』とか言うんだよ!!マジ、キモい!!


「へえ~モテて良かったじゃん(*^皿^*)彼女となら北海道に帰れるねドキドキ


「うるさいよ!」
と、はやてはニヤニヤからかったわたしを凸ピンした。


わたしは都内が好きだし、暑かったり寒かったりが極度なとこには行きたくないから北海道は嫌と言ってる。
もちろん、はやてが真剣に帰りたいんであれば考えるけど、いまは帰っても職がないしね。


不思議なことにわたしは、はやてがえりかに迫られてるということに、不安を感じるどころか、他人事のように面白半分に受け止めていた。
はやてに愛されてる自信があったからか、はやてが浮気しないと信じていたからか、相手がえりかだったからなのか。。

むしろ小学生を筆頭に1歳児がいるのに家に殆ど帰らないこと、女性が野宿なんて危険だということばかりを不安に感じていた…

前兆

しばらくして、またもや夫はやてが寝ているときにえりかから着信が来た。


「はやて!えりかから電話だよ」
はやてを揺り起こして携帯を渡した。
「ん…」
はやては携帯を受け取ると、おもむろに拒否を押し、そのまま寝た。
「仕事の話じゃないの?いいの?」
「いい」
はやての返事に不審を感じ、履歴を見た。


ここ数日えりかの着信は、着信拒否されていた。
着信拒否設定をしたことがないわたしは、てっきりはやてが接客中だったから電話に出れず、拒否にしたのだと思っていた。


着信拒否に深い意味があったことを知るのはまた後日。

着信履歴

わたしは、夫はやての公認で、はやての携帯をよくいじってる。

はやての電話帳を分かりやすく分類分けしたのもわたしだし、メールボックスにフォルダを作ってあげたのもわたしだ。

元々は交際中にはやてがわたしの携帯をいじっていたから、わたしもはやての携帯をいじるようになったのだが、いまでははやてはわたしの携帯に触ることは稀だ。



はやてが寝てるところに、携帯に着信があった。


「電話来てるよ」
「…ん?ああ」
はやては電話に出ると短く話して電話を切った。
「会社行って来る」そう言って足早に支度し、会社に行った。


それから数日後、はやての発着信には、この前と同じ番号がいくつかあった。


そのときにはこの番号がえりかのものだとわたしは知っていた。
はやて自身がわたしに教えたからだ。
はやての会社で働くパートさんなのだから、電話帳に登録すればいいのにと思っていた。
なぜしないのか、それを知ったのはそれからまた数日後だった…!!

始まりは静かに

あれから何度かえりかの話題が出た。

結局、小学校も同じではなかったので、まるで知り合いではなかったけれど、同い年で5人のママだというのが、わたしに親近感を抱かせた。

そのうち子供同士で遊ばせたいな、とさえ思っていた。


そんなとき、義母から鮭が送られて来て、そのうちの1本をはやてはえりかにあげた。


「今日あんまりおなかすいてないんだ~」
「じゃあ夕飯いらない?何か食べたの?」
「うん。えりかがさ、あげた鮭でちゃんちゃん焼き作って会社に持って来たんだよね~。で、おれが鮭の粗汁作って、会社のみんなで食べたんだ」
「そっかぁ」

そしてこの日の夕飯はわたしと娘たちだけだったので簡単なもので済ませた。



それから数日後、はやてがファミレスで同僚と朝食食べて来ると言う。
ファミレスが嫌いなはやて。
早朝だから他にお店が開いてないのはわかるが、違和感を覚えた。


「誰と行くの?」
「○○とか××とか。みんなで行くから誰が行くかわかんない」
「あ、そう」

女の勘でえりかと行くんだな、と思った。
いまでもあのときのことを確かめていないけれど、きっとそうだったと思う。


別に構わない。
はやては積極的に浮気するような夫ではないし、相手が5児のママとあっては浮気の可能性は微塵もないからだ。


えりかとファミレスでモーニングくらいすればいい。


そう気軽に考えて、はやてを送り出した。


けれど、いまにして思えば、引き金が引かれたのはこのときに違いない。
もしわたしがはやてを行かせなければ、後々の豹変は招かなかったのだろうか…

同級生

ある日、夫はやてがわたしに
「なに中出身だったっけ?」
と聞いて来た。
「都内の私立だよ」
「あ~そっか」
「なんで?」
「パートさんにおまえと同級生がいるんだよねぇ」
「え~!!そうなんだ?小学校はどこなんだろ?もしかしたら同じかな!?名前なんて言うの?」
「いま結婚してるから、旧姓聞いてみるよ」
「うん、そうしてーニコニコ

このとき、わたしはただ、もしかしたら同級生かもしれないことに浮かれていた。
お互い結婚していて子持ち同士となれば、子供同士遊ばせられるかもしれない。
そうなったらいいなニコニコ
ただ暢気にそう考えていた。


まさか、その思いが見事に翻されるとも知らずに!!

人物紹介

のりこ(わたし)

はやて(夫)

さき(長女5歳)

すう(次女2歳)



えりか(元・夫の会社のパートさん。夫のストーカー。5児のママ)



わたしと夫は、わたしの実家がある、わたしが育った地元で暮らしている。
夫の実家は遠く離れた北海道。
彼女はわたしと同じくいま暮らしているこの街が地元。
彼女の夫は鹿児島出身。