帰りのヒースロー空港。
まるで私の、
13年ぶりの里帰りを、
待ってましたとばかりに、
新装オープン仕立ての、
第2ターミナル。
これまた、
ロンドンらしい、
低い曇が立ち込める空。
チェックイン後に、
最後の一服をするべ…と、
再び建物の外へ出ると、
向こうの方で、
何かやってる。
やたら、
派手な、
お衣装モードの女たちが、
何かやってる。
見過ごす訳にはいかない、
物凄いオーラ満載だったので、
近づいてみた。
撮影だ。
しかも、
各国のCAだ!
私が、
憧れた職業、
スチュワーデスだ!
とてつもない高揚感と、
味わったことのない焦燥感。
街で、
派手なオカマや、
パレードや、
打ち上げ花火にさえ、
レンズを向けてしまう人たちの、
衝動が、
気持ちが、
初めて理解できた気がしました。
しばらく静観する構えを、
見せていた私でしたが、
居ても立ってもいられなくなり、
気付けば、
その中に、
しっかりと混ざっていました。
完全なる営業妨害!!
「旅の恥はかき捨て」とは、
まさにこのこと。
別のカメラ目線まで、
要求し、
何の説明もなしに、
バシャバシャと……。
そりゃ、
私なんかより、
何万倍も、
サービス業に、
命をかけている人たちです。
それを、
いいことに、
見境のなくなった私……。
自分だったら、
結構な頻度で、
断るようなことなのに……。
だけど、
だけどだけど!
こんな機会、
仮に私が、
女装CAとして、
どこかの航空会社に、
採用される日が来たとしても、
そうそう巡り会えるものでは、
ないはず。
いや、
絶対にない!
これは、
神様が、
私にくれた、
人生最高の、
『写メ会』なんだわ…と、
言い聞かせている内に、
だんだん、
彼女たちが、
色とりどりに着飾った、
女装仲間に見えてきてしまい、
まるで、
自分も、
10年前から、
同業者のみたいな錯覚に、
陥っていたら……、
あ、
ひとり増えた。
わーい。
豪華ー。
ああ、
それにしても、
こんな時に限って、
何てラフな格好を……。
などと、
お門違いも甚だしい、
どうでもいい後悔を、
感じた頃、
ようやく我に返り、
『あ、
もしかして私、
今、
とてつもない邪魔者?』
ということに気づきました。
ほら、
ふたり分の居場所を、
占拠してたんだわ……。
それにしても、
壮観!
早く、
クリスさんかダイアナに見せて、
それぞれどこのエアラインか、
教えて貰わなきゃ。
予定外の邪魔者に、
時間を取られ、
やっとこさ解放された皆さん。
思わず拍手しちゃってるもの。
ホント、
ごめんなさい。
なのに、
私ったら、
今日も、
コンビニで、
『写真撮ってください。』と言われて、
断っちゃった……。
身勝手なもんです。
しかし、
自省もこめて、
今日から、
先着3組は、
写真頼まれても、
ちゃんと笑顔で、
対応することにします……。
我ながら、
超恩着せがましいわ。
さようなら。