W124(S124)300TEも17万キロを超え、以前から気になっていたオイル下がりらしい症状がひどくなってきました。数日間エンジンを掛けずにいて始動するとマフラーからはかなりの白煙が出ます。プラグにはオイルの燃えかすがこってりと付いています。もう笑うしかないレベルです。

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さすがに限界です。

幸いSOHCのM103エンジンはバルブスプリングも大きいうえに剥き出し状態で作業しやすそうですし、何より各気筒に2個しかバルブがないのでDOHCの半分の手間で済みます。
観念してステムシールを交換することにしました。

準備開始です。

必要なパーツを揃えます。
タペットカバーパッキン
バルブステムシールキット
ブリーザーホース

工具はこんな感じ。
プラハンマーとあて木
27mmソケット
バルブスプリングコンプレッサー
ピックアップツール
プラグアダプター
エアコンプレッサー
ロープ

ステムシールを交換するときにはバルブがシリンダ内に落ちないようピストンを上死点にする必要があります。クランクシャフト先端に27mmのソケットをかけてクランクを回す際クーリングファンが邪魔になるのでファンカップリングごと取り外します。

この作業についてはネット上にたくさん情報がありますので詳細は割愛しますが、自分は8mmのHEXビットとビットソケット、ブレーカーバーを使用しています。この組み合わせならラジエーターとファンの狭い隙間にも余裕で入りますし、十分な力がかけられます。ファンプーリーの回り止めは例の方法でやりますが、ツールはわざわざ買わなくても針金ハンガーを折り曲げて作れます。

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さてさて、カムカバーを取り外します。


プラグからサプレッサー(ソケット)を引き抜きます。固着しているときは無理に引き抜くとコードが断線することがあるらしいのでサプレッサー用のプライヤーを使用しましょう。
タペットカバー上のプラグコードのカバーを外し、プラグコードはエアクリーナー側に避けておきます。
カムカバーから生えてるブリーザーホースを外します。プラスチックのように硬化していたので砕いて外しました

10mmのボルト8本(15N)を外しカムカバーを外す準備ができました。
が!パッキンが固着しているのでなかなか外れません。カムカバーのふちに木片をあてて力が直接伝わるようにしてハンマーで軽く叩くこと数回でカバーが外れました。


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そんなに汚くなくてホッとしました。
17万キロ超えていてこの状態ならまずまずでしょう。

パッキンは硬化していましたので再使用不可能です。

せっかくなのでカバーを塗装し直します。
塗装を剥がして脱脂して、プライマーを吹き、耐熱塗料を吹き付けました。

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カムベアリングユニット上の長い板を外します。これはオイルをカムやロッカーアームに注ぐ役割があります。穴が詰まっていないか点検しておきます。
ボルトの位置は等間隔ではないので、取り付けるときに前後を間違えることはないでしょう。

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13mmのボルト4本を緩めてベアリングユニットを取り外します。

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カムベアリングユニットの底面にはオイルが通る穴が開いていてヘッド側のスリーブが嵌っていますので、真上に引き上げるようにして外します。
ユニットが浮いたらロッカーアームとバルブの間に挟まっているボールワッシャーが落ちないよう、マグネットのピックアップツールで取り外します。

バルブリフター(ラッシュアジャスター)はロッカーアームにきつく嵌っているので、ベアリングユニットを持ち上げる時も落ちてくることはないでしょう。
また、バルブスプリングの脇にオイルが戻っていく穴がありますが、ボールワッシャーやコッターより小さいのでそれらのパーツが穴に落ちることはないでしょう。ただし、ゴミなどが落ちないよう注意します。

取り外したカムベアリングユニットはきれいな容器に置いておきます。

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バルブリフター(ラッシュアジャスター)を分解清掃するのでなければ特に手をつけずにそのまま組み付ければよいでしょう。
※ラッシュアジャスターとベアリングユニットの分解清掃は別に書きます。


バルブスプリングがすっかり見えるようになりました。



クランクシャフト先端に27mmのソケットをかませ、クランクを回して1番の上死点を出します。上死点になったら必ずハンドルをロープで固定します。固定しないとプラグホールから圧縮空気をかけたときにクランクが回ってしまいます。
ロープは「てこ結び」と「なんきん」で縛っています。興味がある人は検索してみてください。

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プラグを抜き、代わりにプラグアダプターをねじ込み、エアホースをつなぎ圧縮空気を送ると、バルブはぴったりと閉鎖されてシリンダ内に下りません。

準備ができたらバルブスプリングコンプレッサーの爪をバルブスプリングに掛けて、スプリングを縮めていきます。
またスプリングには元通りの向きに戻せるようマークをしておきました。



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バルブスプリングを縮めたときにバルブステムの先端ができるだけ長くバルブスプリングから突き出しているほうがコッターは脱着しやすいです。
そのためバルブスプリングを最大限に縮められるよう、スプリングコンプレッサーの爪はスプリングのできるだけ下のほうに掛ける必要があります。しかし購入したバルブスプリングコンプレッサーの爪は厚く、なかなか下のほうの隙間にかからなかったので、爪をグラインダで削って薄くしました。

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ついでに説明しておくと、シリンダに圧縮空気を送るのはバルブをシリンダ内に落とさないようするためと説明されていることがありますが、ピストンが上死点にあるときはピストン上面とバルブの間隔は1cmもないので、バルブがシリンダー内に落ちることはありません。

なぜ圧縮空気を送るなどという面倒なことをするかというと、バルブスプリングを縮めたときにどうしてもバルブはシリンダ方向に数ミリ下がってしまうのですが、この数ミリのためにコッターの脱着が難しくなるので、バルブが下がらないように下から圧縮空気で支えてやろうということです。

無事にバルブスプリングが縮められてコッターが顔を見せたら、マグネットツールでくっつけて取り外します。

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コッターががっちりと嵌ってしまっているときは、目打ちのようなものでこじって固着を外してやります。
私が使ったペン状のピックアップツールは、磁石の反対側はケガキ針になっていて、ツールをくるっと回して針と磁石が使えたので便利でした。

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コッターが2個外れるとバルブスプリングが開放されますので真上に引き抜きます。

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外したバルブスプリングはスプリングコンプレッサーを掛けたまま置いておきます。

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いよいよステムシールの交換です。
ステムシールには胴にタガのようにリングが巻いてあります。リングの色はIN側は黒、EX側は銀(色なし)、シールの上面の形状も微妙に異なるので間違えないと思います。

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古いステムシールをラジオペンチなどで摘み、まず回転方向に捻って固着を解けば真上に引き抜けます。ラジオペンチは先曲がりのものが使いやすいでしょう。

古いステムシールが抜けたら、新しいステムシールにオイルをつけ、筒を被せたバルブステムを通します。根元に達したら「コクッ」と嵌るまで指で押し込みましょう。

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ステムシールが嵌ったらスプリングを戻します。
スプリングをステムに通し、コッターが2つ正しく嵌ったらスプリングコンプレッサーを外します。

このプロセスを6気筒分繰り返すわけですが、6発の場合、行程上1&6、2&5、3&4の各気筒が同時に上死点になりますので、第1気筒をやったらクランクを回さずに第6気筒をやり、次に第2気筒を上死点に合わせて一緒に第5気筒をやり、最後に第3気筒・第4気筒を交換するのがクランクを回す手間が少なくて済みます。

上死点を出すにはクランクプーリーのマークを見ながらが確実ですが、プラグホールからシリンダ内にタイラップとかストローのような柔軟な樹脂の棒状のものを突っ込んで確認するか、カムの位置で判断するのが簡便です。


すべてのバルブスプリングを取り付けたら天辺にボールワッシャーを乗せ、カムベアリングユニットを取り付け、ボルトを締め付けます(21N)。
このときカムの位置によってはロッカーアームが押されて座りが悪いことがありますのでクランクを回してカムの位置を変えてやりましょう。

最後に念のためラッシュアジャスターとボールワッシャーの間にガタがないことを確認します。

カムカバーのボルトは15N。パッキンがきちんと嵌っていることを確認してから締めていきます。

ブリーザーホースやフラグコードを取り付け、クーリングファン周りを戻したら完了です。


◼︎まとめ
カムカバーを外すので重整備チックですが、適切な工具があれば作業そのものの難易度は高くはありませんでした。
ポイントはいかにバルブスプリングを縮めてコッターを外すかですが、素人が手に入れられる工具で決定的なものはなさそうです。

アストロプロダクツなどの有名ツールショップで販売しているツールは爪も薄く、スプリングを押す機構も良くできていますが、図体が大きいので6番をやる時はボディに干渉して使えないという情報がありました。

その点私がたまたま購入した工具は爪が厚くてそのままでは使い勝手が悪かったのですが、本体はコンパクトなので6番をやる時もスペースに余裕がありました。

肝心の作業後の効果ですが、オイル下がりはバッチリ止まったようで、始動時やレーシング時の白煙はなくなりました。まあ当然と言えば当然ですね。
今まで散々オイル混じりの排気を吐いていたから、マフラーも詰まって通りが悪くなっているんだろうなあ…。

ただ、ヘッドガスケットやチェーンカバーパッキンからのオイル漏れがひどいので、近いうちにヘッドガスケットを交換してヘッドをOHしないとダメそうです。

◼︎お礼
作業を進めるにあたってはヘインズの整備書のほかに諸先輩方のブログを参考にさせていただきました。
ありがとうございました。
noranboの修理日誌さん
Mercedes-Benz W124 メンテナンス by magさん
190Eをいじろうさん
Edyeの小部屋さん