去年、僕の部屋の雨戸袋には鳥が巣を作り、雛を産みそして巣立って行った。
当時は朝の4時過ぎから雛達がけたたましく鳴きだし、僕は完全に睡眠を妨げられ発狂寸前になっていた。
巣立って行った後は、やっとこの悪夢から解放されるという安堵感と、これで普通の生活を取り戻せるという希望を感じていた。
しかしなんと、今年も鳥達が帰って来たんだ。
あの悪夢のような毎日がまた始まるのか?
そう思ってる筈の僕の中に、
『お帰り‥。』
何故か、そう微笑む自分がいる事に気づいてしまった。
僕の中に芽生えた、
『お帰り。』
という暖かさは日々ゆっくりと、しかし確実に僕の中の悪夢をほぐしながら、体中に染み渡っていった。
最近では巣の近くで様子をうかがってるカラスを追い払ったり、雛鳥達の声がまだ聞こえない事が気になって、懐中電灯片手に巣の中を覗いたりしている。
後輩などに、
『また鳥来てません?どうするんすか!?』
と聞かれても、
『どうするも何も、多分夏鳥やから繁殖の為に帰って来るのは当然やろ。
同じ場所で子育てしてるからツバメの仲間やろな。』
と、自分で調べた知識を披露してる始末である。
きっと来年辺りには、定点カメラを設置して雛鳥達の成長と巣立ちの瞬間を完璧に抑えてるかも知れない。
その写真が日本野鳥の会の目に偶然とまって、
『難波さん、これは非常に貴重な写真ですよ、この鳥は民家近くに巣を作る事はなく、今までその繁殖や生態は謎の部分が多かったんです!』
と高い評価を受け、そこから日本野鳥の会青年部の代表として、写真展を開いてるかも知れない。
日本野鳥の会で、双眼鏡をぶら下げカメラのシャッターを切る僕を、今と変わらず応援して頂けたら幸いです。