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「 一人の男がいる。歴史が彼を必要としたとき忽然として現われ、その使命が終わると大急ぎで去った。

   もし、維新というものが正義であるとすれば、彼の役目は津々浦々の枯木にその花を咲かせてまわる

  ことであった。中国では花咲爺いのことを花神という。彼は花神の仕事を背負ったのかもしれない。
   彼―村田蔵六、後の大村益次郎である。 」

 

 一人の女がいる。

 

 

 歴史が彼女を必要としたとき忽然として現われ、その使命が終わると大急ぎで去った。

 

 もし、大河ドラマというものが文化遺産であるとすれば、
 彼女の役目は津々浦々の枯木にその花を咲かせてまわることであった。

 

 中国では花咲爺いのことを花神という。

 彼女は花神の仕事を背負ったのかもしれない。
 
 彼女―大野靖子、後の『国盗り物語』 『花神』の脚本家である。

 

 上記の文に見覚えのある方はおられるであろうか。そう、現在では『花神』"総集編 第一回 「革命幻想」"で観ることのできる、あのオープニング…そう、元はと言えば、御大・司馬遼太郎の書いた文章である。それを誰の許可もなく改変し、当該記事のオープニングに使用した私の悪戯心は、どうか笑ってお許し願いたい…。

 

 1977に発売された「花神 NHK大河ドラマ・ストーリー」には、非常に興味深い記事が掲載されている。

「 

 心強い事は、斉藤(暁)チーフディレクターを始めスタッフのメンバーが『国盗り物語』とほぼ同じ事だ。いわば苦労を共にした戦友であるわけで、(略)朝の四時半まで激論を戦わして、傷ついたり、傷つけたりした仲だが……お互いあの時の辛い段階を経ていなければ、『花神』は別の形のドラマになっていたと思う。はっきり言って、つまらない、ありきたりの幕末ドラマになっていたという事だ。 (再び大河ドラマと司馬さんと… 大野靖子)

 司馬遼太郎の複数の原作を、類稀なるセンスで一本の群像劇として纏め上げた1973年の『国盗り物語』。そしてその4年後…原作も同じ司馬遼太郎、脚本も同じ大野靖子、音楽も同じ林光、チーフプロデューサーも同じNHK・斉藤暁、その他多くのスタッフも…今度は大村益次郎を中心に据えた、幕末/明治維新を舞台とした大河ドラマを製作すべく、スタッフは再集結した。『花神』の誕生、である。

 

 他の幕末/明治維新大河同様、『花神』も放送当時は目覚しい視聴率を記録した訳では決してない。だが、数多くの人間が未だに『花神』こそが大河ドラマの最高傑作と信じて疑わないことからも、その影響力というのは計り知れない。

 

 三谷幸喜が「真田丸」に賭ける凄い思い。大河ドラマが好きすぎて脚本家になった男 

 https://www.excite.co.jp/news/article/E1458436798417/

 

 村田蔵六こと大村益次郎を中村梅之助が演じたことも、非常に重要な要素であった。彼が大村益次郎を演じるにあたって、並々ならぬ研究を重ねてきたことはつとに有名で、当時を知るスタッフ(例:高杉晋作を演じた中村雅俊)が証言を残しているのみならず、かの司馬遼太郎までもが「梅之助さんは見事に演じきってくれた。演芸史に残る演技だ」「滅多におかしがることのない蔵六も『梅之助氏の演じた蔵六こそ私です』と顔をゆがめるだろう」と、絶賛を重ねたという逸話が残っている程だ。

 

 『国盗り物語』との対比から述べると、群像劇の体を成しながらも『花神』は更に統一感が増している。緒方洪庵(宇野重吉)の適塾に入門する村田蔵六の登場に始まり、吉田寅次郎(松陰)の篠田三郎、高杉晋作の中村雅俊、河井継之助の高橋英樹、そして司馬の『十一番目の志士』に登場する唯一の架空の人物である天堂晋助の田中健…これらのメインとなる人間の傍らに楠本イネ(浅丘ルリ子)、桂小五郎/木戸孝允(米倉斉加年)、山県狂介(西田敏行)、時山直八(松平健)、坂本龍馬(夏八木勲)等々の登場人物にもスポットを当てながら、大村益次郎の暗殺による死、そしてそれを悼む妻・お琴(加賀まりこ)とイネの描写と若き日の益次郎の描写で物語は幕を閉じる。その話数は52話で、大河ドラマの本数としては別段多いものではないにもかかわらず、総集編はその質量を損なわないよう、当時異例の5回にも及んでいる。これは、現在に至るまでの総集編としては最大の収録時間となっている。そして2018年現在、失われた通常回49話分に替わってDVDやNHKオンデマンドで『花神』を直に知る唯一の手段である。

 
   第1回:革命幻想     (120分)
   第2回:攘夷の嵐     (90分)
   第3回:崩れゆく長州 (90分)
   第4回:徳川を討て   (90分)
   最終回:維新回天    (120分)

 

 また冒頭に紹介した、林光の名曲を背景としたオープニングも忘れられない。この曲も歴代大河ドラマのテーマ曲としては、度々最高傑作として語られている。内容についてはまたつぶさに触れるとして…まずは、いま一度『西郷どん』を総集編で振り帰る傍らで『花神』について考えてみたい。 (続く)

 

1977年 大河ドラマ 【花神】 データ

[放送期間] 1977年1月2日~12月25日(全52回)
[原作]     司馬遼太郎
[脚本]     大野靖子
[音楽]     林光

[演出]     斉藤暁 他

 

初回視聴率16.5%、最高視聴率25.9%、平均視聴率19.0%

 

[出演]

村田蔵六→大村益次郎:中村梅之助

お琴:加賀まりこ

吉田寅次郎→吉田松陰/篠田三郎

高杉晋作:中村雅俊

河合継之助:高橋英樹

桂小五郎→木戸孝允:米倉斉加年

坂本竜馬(当時の表記):夏八木勲

山県狂介:西田敏行

時山直八:松平健

海江田信義:中丸忠雄

西郷吉之助:花柳喜章

大久保一蔵:高橋長英

 

楠本イネ:浅丘ルリ子

 

天堂晋助/田中健
久坂義助(玄瑞)/志垣太郎
お雅/岡江久美子
おうの/秋吉久美子
お里/大竹しのぶ
緒方洪庵/宇野重吉
周布政之助/田村高廣
伊藤俊輔/尾藤イサオ
井上聞多/東野英心
佐久間象山/南原宏治
二宮敬作/大滝秀治
たき(其扇)/月丘夢路
藤村孝益/浜村純
毛利敬親/金田龍之介
嘉蔵(前原巧山)/愛川欽也
宮部鼎蔵/高橋悦史
一橋慶喜→徳川慶喜/伊藤孝雄
粟屋菊絵/范文雀
野村望東尼/草笛光子
小山良庵/寺尾聰
白石正一郎/瑳川哲朗
杉百合之助/久米明
お滝/津島恵子
神代直人/石橋蓮司
金子重之助/岡本信人
竹院/志村喬
近藤勇/竜崎勝
土方歳三/長塚京三
三浦長兵衛/名古屋章
寺島忠三郎/池田秀一
天堂義助/天本英世
寺島秋助/森次晃嗣
牧野忠訓/中島久之
沼崎吉五郎/草野大悟
小林寅三郎/伊武雅之(伊武雅刀)

 

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大河ドラマ「西郷どん」総集編

2018年12月30日(日)NHK総合

 

第一章:薩摩 13:05~14:05
第二章:再生 14:05~14:55
第三章:革命 15:05~16:25
第四章:天命 16:25~17:35

 

【再放送】
2019年1月2日(水)NHK BSプレミアム

8:00~