原作・山本周五郎。江戸時代前期に仙台藩伊達家で起こったお家騒動「伊達騒動」を題材にしている。


従来は悪人とされてきた原田甲斐(平幹二朗)を主人公とし、幕府による取り潰しから藩を守るために尽力した忠臣として描くなど、新しい解釈を加えている。原作は4部からなり、本編の合間に藩の乗っ取りを企む伊達兵部(佐藤慶)とその腹心・新妻隼人の密談を対話形式で描く断章が原作には挿入されているが、現在唯一確認出来る映像である「総集編」には含まれていない(恐らくこれは踏襲されていないと見られる)。


物語の序盤では、栗原小巻が演じる甲斐の恋人・たよとの悲恋を中心にした、原作には無い甲斐の青春時代がオリジナル脚本として書き下ろされており、第14回から原作部分に入っているが、「総集編」では、冒頭から伊達騒動の勃発が描かれており、上述の甲斐の前半生は総集編・前編の途中で、甲斐が回想する形式で収録されている。


また、大河ドラマのいわゆる「ご当地ブーム」はこの作品からはじまったとされ、ドラマの舞台地(仙台)で本格的にロケが行われたのも、この『樅ノ木は残った』が初めて。


主人公・原田甲斐の候補には市川雷蔵、中村錦之助(萬屋錦之介)、仲代達矢、芦田伸介の名が挙がっていたが、最終的には平幹二朗に落ち着いた。



前作『天と地と』が上杉謙信/武田信玄の対決(川中島の戦い)をクライマックスとした華のある作品だったのに比し、この『樅ノ木は残った』は全体的に暗く緊迫したトーンが続く映像で、実際精神を病んだ挙句の死によって退場となるたよ役の栗原小巻を筆頭に、伊達兵部(佐藤慶)の怒涛の如き粛清が続いて、次々と人が無残な死を遂げる。


そして、この作品のクライマックスが、総集編冒頭の江戸の酒井雅楽頭(北大路欣也)邸での大殺戮劇。通説では行われた評定の席で劣勢に陥った甲斐が、上訴の主である伊達安芸(森雅之)らを斬り殺し、自身も斬られて死亡したことになっている。


しかし、多くの矛盾に考察を加えた原作者・山本周五郎は、伊達家の人々の殺害を命じたのは、伊達兵部(佐藤慶)との密約の書状が世に出ることを恐れた酒井雅楽頭(北大路欣也)という、ウルトラC級の推理を導き出した。


実際、登米郡米谷の原田氏の菩提寺東陽寺には旧家中や町人を含め137名が集まり、亡君の供養を行った記録が残っており、さらには、延宝七年に甲斐供養塔と伝えられる石塔が建立されている。事件ののちも原田氏の旧家中の人びとが集まり亡君の供養を行っていることや、さらには、町人や身分の低い者も含まれたことが明らかになっており、総集編後半ラストもそこを強調した上でしめられる。




原田甲斐はあえて全ての罪を被り、久世大和守(岡田英次)の

伊達家存続を確約した言葉を聞いて絶命した。



このストーリーの白眉は山本周五郎が語る様に、「登場人物には芯からの悪人は誰もいない」という視点かと思う。最大の悪の元凶である伊達兵部(佐藤慶)でさえ高知に流される最後に、「息子の行く末を案じて、自分の藩を大きくしたかったのがなぜ悪い」というセリフを吐くし、そのまた上の悪の親玉・酒井雅楽頭(北大路欣也)にしても「私が願うのは徳川家の安泰のみ」と、確かに言っていた。

 


しかし、その末の度重なる犠牲者の山を思えば、これはなかなかにやり切れない気持ちにさせられるのもまた事実で...。


ちなみに1970年当時の世相を省みると、「モーレツからビューティフルへ」、なんて言葉が流行っていて、企業の社会的責任(CSR)の重要性見直しが単なる「忠臣」では片付けられない原田甲斐の行動原理とそこはかとなく重なっていたりして…またもうひとつの流行語「ディスカバー・ジャパン」も、この作品が大河ご当地ブームの先駆けだったことを思うと、不思議に無関係とも思えなかったりする(コジツケですかネ…どうもスミマセン)。

  


原田甲斐の居城・船岡城があった宮城県柴田郡柴田町の郷土資料館には、モノクロだが全52回中51回の録画テープが保存されていると言う。



【放送期間】
1970年1月4日~12月27日(全52回)


【放送時間】
日曜20:00-20:45(45分)


【原作】
山本周五郎『樅ノ木は残った』


【脚本】
茂木草介


【出演者】

 

原田甲斐/平幹二朗

たよ/栗原小巻



宇乃/吉永小百合


伊達兵部/佐藤慶

伊達安芸/森雅之


酒井雅楽頭/北大路欣也

  

(その他)伊吹吾郎、金田龍之介、若林豪、藤岡琢也、西村晃、佐藤友美、志村喬、芥川比呂志、加東大介、岡田英次、尾上菊之助、田中絹代 他


【視聴率】

初回視聴率27.6%、最高視聴率27.6%、平均視聴率21.0%





大河ドラマ「おんな城主 直虎」総集編 第一章「女子にこそあれ次郎」  (きょう5月5日 8:15~NHK総合)

 http://www.nhk.or.jp/naotora/info/program/article34.html

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http://news.ponycanyon.co.jp/2017/04/19044


それでは、次回もお楽しみに。

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