虚空の花びら

Amebaでブログを始めよう!
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 最初次のページへ >>

2.心の闇

「!?」


びっくりした2人は声の主の方を振り向いた。


そこには着物を身にまとった赤茶色の長髪の青年がたっていた。


着物を着たすらりとした体で、肩に羽織をはおっており、仏のような顔で微笑んでいた。


「本当にあきらめてしまうのですか?」


「えっ・・・!」


二コリとされ、戸惑う恵喜だがとなりにいた圭一は冷静に答える。


「だってぜんぜん帰ってこない・・・きっとすてられたんだ・・・」


うつむきながらボソボソという圭一に対して、青年はまた二コッと微笑む。


「あなたは自分の両親がそんなことすると思うのですか?」


「・・・それは」


「だいじょうぶですよ。きっと」


そのとき、圭一の心で何かがはじけた。




《そんなわけない・・・お前はすてられた》


誰かが僕の中でささやく・・・


《お前はもう認めちまってるんだ・・・あきらめろよ》


圭一の瞳が揺れ出した。


《さぁ・・・楽になれ》


その言葉にもうどうでもよくなり、僕は頷いてしまった・・・




長く沈黙が続いた。すると突然圭一が黙り込んでしまったのだ。


恵喜は心配になった。


しかし、そんな空気を切り裂いたのは圭一本人だった。


「ははは・・・そうだよ。そう思っちゃったんだもん!仕方ないよっ!!」


突然笑い出し、不気味に微笑む。


性格が変わってる・・・何かあったのか・・・?


「・・・そうですか」


青年はじっと圭一の姿をみつめる。



「 『・・・そうですか』 っじゃないよっ!!人事みたいにいってさっ!


僕の気持ちなんか分かりもしないくせにっ!!同情なんていらないんだよっっ


僕は家族が帰ってきてほしいんだっ!!」


圭一は自分の気持ちを思いっきりぶつけ、息を切らしていた。


「圭一・・・」


僕はそんな彼を見て泣きそうになった。


そんなに苦しんで・・・


胸が悲しみで締め付けられるように苦しかった。



すると、ようやく青年が口を開いた。


「そうですね。私がどうこうしてもあなたの家族は今すぐ帰ってはこないでしょう。


ですが、わたしには見えます。あなたが鬼につけ入れられていることを・・・」


「!!」


鬼・・・?


僕には何を言っているのか分からなかったが、圭一の反応をみるかぎり、


圭一は何か知っているようだった。


「心を失ってはいけない・・・失えば永遠に家族とは会えない・・・。


あきらめる以前の問題ですよ・・・・?あなたはそれでいいのですか?」


ぴくりと圭一の体がうごく。


うるさい・・・


それは圭一とはおもえないほど暗く恐ろしい声だった。


すると腕が締め付けられるように痛み始めた。


そこはあざのある場所だった。


僕は思わずさけぶ。


「圭一っ!!どうしちゃったんだよっ!らしくないじゃんかー」


僕は圭一がこのままどこかへ行ってしまう気がして不安になっていた。


必死に彼の肩を揺さぶるがむなしくも突き飛ばされてしまう。


「・・・っ」


背中に激しい痛みが襲う。起き上がるのがつらかった。

     こわっぱ

だまれ小童がぁっ!主に我らの苦しみがわかるかぁっ!


我・・・ら・・・?


口調も変わっているため、もう圭一ではないと恵喜悟る。


あざがうずく。


すると、手が勝手にそばにあった水溜りの中へ入っていった。


「!」


なんで勝手に・・・!?


水は手の中で形を変えてゆく。それはやがて刀の形へとなった。


これは・・・!?


「まだ会えないと決まったわけではないっ!!わたしには見えます。


あなたが家族と再会する光景が・・・」


うそだっ!!


「ほんとうですよ。今なら戻れます・・・自分であるときに信じることができるのです。」


優しく微笑む彼の顔には嘘をついているようには思えなかった。


しばらくの沈黙がつづくと


「ほんとうに・・・?」


一瞬圭一の声に戻った。





                          

1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 最初次のページへ >>