彼は言う
「少し、良くなりましたか?」
私は静かに頷き、そのまま
白い布団に うずくまった
ベッドサイドで
私の顔色を確認してから
彼はキッチンへと向かう
静かで心地いい料理の音を
聞きながら 私は眠った
どこまでも白い部屋で
なにもかもが白い部屋
白色は 清潔感と信頼感を
あらわすのだそうだ
同時に 緊張も感じさせる色
だと聞く
私の中の白のイメージは
丸くて のっぺりしていて
つるんとしている。
やわらかいようで
かたくて 暖かいようで
冷たくて 誠実な色。
安心するような気分にもなる
もしかしたら私の前世は
白い世界で 生きる
何かだったのかもしれない
白い空、白い海、白い浜辺、
カルピスを飲んだときに
その情景が浮かんだ時のことを
この部屋を見ると思い出す。
カーテンの隙間から
光がもれて
目が覚める
ちょうど 食事の準備が
整ったようだった。
テーブルには
透明な2つの立方体の置物が
太陽光に照らされてキラキラしている。
二人の間で
普段は ひとつずつ持っていて
時間を共にするときは
こうして ぴったりと並べて
置いている。
私と彼は
それだけの関係だ。
名前があるわけではない。
けど それが
とても気に入っている。
あえて 名前をつけるとしたら
静かで白い関係
とかだろうか
この
静かで白い…という
関係の名前を彼に披露したら
笑われてしまうだろうか…
彼には 秘密にしておこう。