それを見た瞬間、止めどなく涙が溢れてきた。
妻は胸水・腹水・浮腫が酷かったため、緩和ケアに入院してからは、一度も点滴をしていない。
さすがに口から水分を取ることができなくなったのでドクターと相談し、1日200ccだけ点滴をすることにした。これである程度は水分補給はできるだろう。
その事を妻に伝えると、ペンと紙を取って欲しいとジェスチャーで教えてくれたので、ペンと紙を渡した。
君は震える手で一生懸命僕に何かを伝えようとペンを走らせたね。
その文字を見て僕は思わず涙が出そうだったよ。
何を書いているか文字は読めなかったけど、何を伝えたいかは分かったよ。
「点滴すれば、少しは良くなるよね?」って僕に伝えたかったんだよね。
そう思って君に伝えると、君は黙ってうなずいたね。
僕は思わず
「あぁ。きっと良くなるさ」と伝えてしまったよ。
僕は君に最大の嘘をついてしまった。
ごめんね。点滴しても君の病気は良くならないんだ。
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その時の思いがよみがえり、涙がどんどん溢れてくる。
このままでは無事に通夜を行う自信がないよ。
二人の結婚式や父の葬儀の時には、スムーズにできたのにね。
最後にちょっと力を貸してね。