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星空日記

設定まとめとか小説とか。

星空歴△年。魔法界の遥か空の上である一人の少女は小さく溜息を吐いていた。
その少女は桜色のふわりとした長髪を揺らし、背中に大きな翼を生やしている。
そう。此処は天界。そして彼女は地を見守る女神だ。

「…退屈だなぁ」

溜息と共に吐き出したのは憂鬱の言葉だった。
それも仕方ない、彼女は同じ場所で何百年という長い時を過ごしているのだ。
その上、視線の先では人間達が遊んだり喧嘩したり勉強したり…各々のやりたいように過ごしている。憧れない筈がなかった。

「ミレーユ。どう?異常はない?」

そんな彼女…ミレーユの名を呼んだのは同じく翼を生やした女性だった。同じ仲間なのだろう。

「はい、異常はありません」

憂鬱の色を隠し、微笑むミレーユ。
それを見た女性は違和感を感じたのか眉に皺を寄せた。

「まさかまだ地上に憧れているの?」
「お見通しでしたか…申し訳ありません。でも人間達がとても楽しそうで…」

苦笑しながら言い訳を述べるミレーユにその女性は暫し腕を組み、何かを考えているかのような仕草をした。
また怒られるのか、と思いつつ構えたミレーユに女性は予想外の言葉を告げる。


「ミレーユ。地上に降りてみない?」


女神が地上へ降りるのは基本的にご法度であり、降りたとしても人間と交わることは許されない。その禁忌を犯すと言うことは女神である自分を捨てる…即ち堕女神になることを意味していた。

「…それは私に堕ちろと言うことですか?」
「ミレーユ…私が知らないと思っているの?貴女はもう地上に何度か降り立っている」

見据えた目で見つめるその女性の目は何処か冷たかった。
そう、ミレーユは何度か隠れて地上へと降りていたのだ。だからこそ人間の温かさに触れ、憧れを抱いている。
返答に迷っていると言葉を更に続けた。

「貴女の代わりならいくらでも作れる。どうしたいの?女神の資格を失うか、そのまま耐え続け女神であり続けるか」
「…………我慢はしたくありません。このまま此処に居たらおかしくなってしまう気がしています」
「…ならばお行きなさい。ただし女神としての記憶や力は…貴女の心達に預かっていただくわ」
「…分身…ですか」

女神は生まれつき心に自分の分身を持っている。
普段は形にないのだが、女神の資格を失う時に具現化させ、記憶や力を預かってもらう役割をするのだ。


こうしてミレーユは人間…青葉実月として、2人の分身であるミィア・ミーチェと共に魔法界へと堕ちていった──