平成24年に決まった年金制度の改正について、前回「受給資格期間の短縮」「遺族基礎年金の父子家庭への支給」など、受給権が拡大される話を取り上げました。
今回は「共済年金と厚生年金の統合」「更正年金の適用範囲の拡大」といった制度の変更を取り上げます。
●共済年金と厚生年金の統合(平成27年10月実施予定)
現在の公的年金は以下のように3つの制度に分かれています。
・国民年金(1階建ての制度:基礎年金)
・厚生年金(2回建ての制度:基礎年金+厚生年金)
・共済年金(3階建ての制度:基礎年金+共済年金+職域加算)
今回の改正で、共済年金と厚生年金の2階部分が統合されますが、基本的には共済年金を厚生年金の基準に合わせる形となります。
同じ2階建て部分とはいえ、厚生年金と共済年金では、制度にいくつかの違いがあります。
例えば共済年金では、厚生年金にはない「遺族年金の転給」という制度があります。
転給とは、遺族基礎年金を受け取っている人が死亡や結婚などで受給権を失うと、次順位者が引き続き遺族年金を受け取れる制度です。
例としては、子供のいない妻が死亡し、次順位の父母などが転給で年金を受け取れる場合がなどがあります(妻⇒子供は同順位なので転給はありません)。
厚生年金の基準に変わりますので、共済年金の加入者は制度の相違点を認識しておく必要がありそうです。
また、3櫂部分の取り扱いはどうなるかと言うと、この一元化のもとでは廃止されることになりました。
ただし、完全に無くなってしまう訳ではなく、別の法律によって定められます。
●短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大(平成28年10月実施予定)
正社員と非正規社員といった雇用形態の違いによる社会保険適用の角さ解消のため、パートタイマーなどの短時間に対する適用範囲が拡大されます。
現在の適用要件は「1週間の所定労働時間かつ1ヵ月間の所定労働日数が正社員の4分の3以上(概ね週30時間以上)」ですが、4分の3未満の人でも平成28年10月からは、以下の条件を全て満たすと厚生年金・健康保険に加入することになります。
(1)労働時間が週20時間以上
(2)月額賃金が8.8万円以上(年収106万円以上)
(3)勤務期間が1年以上
(4)従業員数501人以上の企業
※ただし、学生は除きます。
これまで厚生年金に加入できなかった非正規社員からみれば、適用範囲の拡大によりセーフティネットは強化されると言えます。
例えば国民年金の被保険者(第1号被保険者)が、厚生年金の被保険者(第2号被保険者)によると、保険料の半分を企業が負担することなりますので、月収によりますが、一般的に自分で負担する保険料が減って、受け取る年金額は増えることになります。
※国民年金保険料は月約1.5万円、厚生年金保険料は月収10万円の場合で月約0.8万円(自己負担分)、月収18万円で月1.5万円(自己負担分)です。
一方、働き方は人それぞれで、厚生年金の被保険者にならない範囲で労働時間を調整している人もいます。
例えば会社員等に扶養されている配偶者(第3号被保険者)が、厚生年金の被保険者(第2号被保険者)によると、今まで保険料負担がなかった人が、保険料を負担することになります。
月収10万円の場合の保険料は月約0.8万円、年間では約10万円の負担になります。
また、健康保険料等の負担も増えます。
<企業規模で異なる扱い>
今回の改正で、適用範囲になる条件の1つに「(4)従業員数501人以上の企業」というものがあります。
(1)~(3)の条件を満たしても(4)を満たさない場合は適用になりませんので、企業の規模で厚生年金への加入が異なることになります。
従業員数501人以上の企業では、年収106万円で厚生年金の被保険者になることもあれば、500人以下の企業では、年収129万円でも第3被保険者のままということもあります。
※厚生年金の被保険者(第2号被保険者)に該当しない場合は、第1号被保険者または第3号被保険者になりますが、第3号被保険者になるためには年収130万円未満という要件があります。