9月のはじめ、国境を超えてオーストリアのインスブルック、宮廷教会のオルガンを弾いてきました!
インスブルック宮廷教会
Hofkirche Innsbruck
E.エーベルト 1561年作
Jörg Ebert
1977年 J. アーレント修復
2段鍵盤とペダル 15ストップ

ミュンヘンの大学の同級生、エリアスくんの案内で、隅々まで紹介してもらえました!エリアスくんは翌週この教会でのコンサート!そしてコンクールまであるのに沢山時間を割いてくれました!
1555年、現在の南ドイツボーデン湖の近くに工房を持っていたエーベルトはオルガン製作の依頼を受け、6年もの歳月をかけこのオルガンを完成させました。エーベルトの希望としては祭壇とは逆側の入り口上部のバルコニーに制作したかったようですが、聖歌隊席上部のこの場所に落ち着きました。1655年にはダニエル・ヘルツ、1700年頃にはJ. C. フンメルがそれぞれ拡大し26ストップの大きさにしています。

鉄製のストップレバー、中のストップアクションまで鉄製でした。これは1562年のオリジナル。あまりにも重く気合を入れないと動きもしませんでした。。笑

1832年には故障により演奏不可能となってしまいます。1844年には解体してしまおうという話まで上がったそうですが、これは幸い実現されませんでした。第二次世界大戦時には空襲から逃れるために分解され、疎開させられそうです。

壁からにょきっと張り出したこのスタイルは「燕の巣オルガン」と言われます。確かに似ている。。

その後1965から1970年、1975から1977年の2回に分けて入念な修復が行われ、1561年の状態に戻されています。6つのストップはオリジナルのまま残されています。
ストップ名もとてもアンティーク。Superoktavはquintez, Gedactがdeckt fleten。。
アルプス付近の澄んだな空気を連想するようなプレノ、それぞれのストップは卓越した奏者のように生き生きと語りかけてくれます。まだフルートストップもなく、音域もルネッサンススタイルなのでブクステフーでもバッハも弾けませんが、スウェーリンク、カベソン、シュリックなどは素晴らしく響きます。
口からモクモク植物を出すおじさんの蓋を開けると..
かわいいレガールが!

ヨーロッパの教会には、よく訪問者の記録ノートがあるのですが、このオルガンのためには1970年代からの厚い厚いノートが残されています。日本からの訪問者、そして歴代のたくさんの巨匠の名前も。エリアスくんの自慢はトン・コープマンの言葉、「これは私が出会った中で最も美しいオルガンである」
他にもハンス・クロッツ、ハラルド・フォーゲル、日本の製作者の辻宏さんもグループでいらしていました。

オルガンのすぐ隣にはルネッサンスから残されている時計。15分ごとにものすごく元気な音を出してくれます笑

こちらの可愛いオルガンは、エーベルトオルガンのすぐ下にありました。作者不詳の18世紀の楽器だそうです。4フィートベースの楽器です。
おままごとのフォークのようなストップノブ。
こちらも繊細ながら生き生きとした素晴らしい音です。
面白いのは4フィート用のVoce Umana、初めて見ました。
小さな小さなリードの木管。

エーベルトオルガンの演奏台から。

ミュンヘンから特急で2時間、また最高のオルガンに出会えました!