ひどく冷え込む朝だった。
ほんのひと月前の暑さを思い出すのが困難なほどだ。
ミサはカフェオレを入れたカップを持ったまま、リビングのレースのカーテンを開いた。
午前六時、マンションの7階のベランダには陽が薄く射し込んでいる。
キッチンに置いてあった携帯電話が鳴った。
着信は妹のユキからだった。
「おはよう、ユキちゃん。ちゃんと起きられたのね。ちょっと寒いけど晴れてきそうだし、楽しい遠足になりそうね」
ミサはそう言ってふと窓に顔を向けた。
ベランダの柵越しに何か黒い物が落下していった。
ほんの一瞬の出来事だった。
ミサがベランダに出るよりも先に悲鳴が聞こえた。
数分後、救急車とパトカーのサイレンが近付き、マンション周辺は騒然としていた。
屋上から飛び降りたのは、マンションの八階に住む16歳の少女だった。
byジャニス