クリニック内でのファシリテーション | 医療介護現場改善のヒント

医療介護現場改善のヒント

医療や介護現場は大変ですね。そんな現場で頑張って働いている方々に少しでも有益となるノウハウや情報、事例をご紹介します。

あるクリニックでこのような事例がありました。


ある日の外来中、ささいなことから職員同士が喧嘩を始めてしまいました。


原因は「業務の進め方について」職員がある職員に対して指摘をしたこと。

指摘をされた職員は自身の考えを曲げることが出来ず、言い合いに。双方が自分の考えを譲らず、結論が出ないままで業務に戻ったので、怒りの感情をそのままに患者さんの対応をしてしまい、驚いた患者さんからご意見を頂いてしまいました。




さて、どうしてこのような事になってしまったのでしょうか。




今回の事例で問題なのは、「職員同士が自分の主張を曲げず、相手の意見を聞き入れることが出来なかった」ところにあります。

殆どの人はこれまでに受けてきた教育や自身が体験した経験から、自分の中に『独自の判断基準』を持っているものです。それは「十人十色」で同じものを持っている方はいないと言えるでしょう。事例のようにそれぞれが自己主張をするだけだと職員間のチームワークが悪くなり、クリニックの接遇の質や運営に影響しかねませんが、裏を返せば職員の数だけアイディアが眠っているということです。


そのアイディアを共有できる場を設け、職員間でブラッシュアップを行い、日々の運営に活かすことができればこれほど有益なことはないでしょう。

普段から職員間の理解を深め、院内の風通しを良くするために話し合いの場を持つようにしましょう。




そこで、『ファシリテーション』についてお話しさせていただきたいと思います。



『ファシリテーション』とは、簡単に言うと『会議において最良の結論を導く方法』です。

例えばAさんとBさんで異なった意見を持っていた場合、それぞれの意見を理解した上で意見交換の場を活性化させるよう取り計らうことで更なる発想を促し、双方が納得する結果を導き出すためのサポートをいい、その役割を担う人を『ファシリテーター』と呼びます。


この方法の長所はファシリテーターが間に立ち会議を進めることで、参加者全員が自身の考えを伝えつつも、双方の納得できる答えを導き出せるところにあります。



では、その答えを導くための手順についてお伝えします。


①会議のゴールを決め、プロセスを考える

会議のゴールを明確にし、そのためにどうするかを考えます。

例えば、職員の普段考えていることをしっかりと理解した上で、結論を導きたい場合は、意見交換の比重を高め、職員が自由に意見を言える機会を設けるようにしましょう。



②会議が始まったら、その場をコントロールする

会議の場において、テーマから脱線してしまうことがあります。

それを防ぐために、会議中は場を俯瞰し、全体を見ることを心がけます。

脱線しそうだと感じた場合は、必要に応じテーマについて考えさせるような問いかけをしてみましょう。



③反対意見を折衷させる

反対意見は会議を進める中で避けて通れないものです。しかし、多くの意見から最良の結果を生み出そうとするファシリテーションにおいては自身とは反対の意見についても考える場を提供します。

それぞれの意見に対して新たな視点を持ってもらえるよう、ファシリテーターからヒントを与え、それぞれが視野を広げて意見を交換できるようサポートしましょう。



また全体を通して、院長自身が「おおらかで柔軟な心構え」で会議に臨むようにしてください。


職員の立場で考えたとき、「しっかり聞いてくれている」と分かれば、気負いせずに意見を出しやすくなりますよね。ですので、活発な意見交換ができる空気を作り出すことを常に意識しましょう。そして出た意見に対しては「否定をせず」「中立の立場」で会議の場をまとめるよう心がけましょう。



最後に、ファシリテーションの実施は接遇にも良い影響を与えることが期待できます。


職員一人一人の意見を取り入れ、一つの案を形成するというファシリテーションでは、自身の意見がクリニックの運営に反映されていると実感できるため、自然と日々の業務への姿勢や、患者さんへの接し方にも変化が表れます。


実際、感じが良いと感じるクリニックの職員の方の様子を見ていると、決まって職員同士のコミュニケーションがスムーズです。待ち時間の間クリニックにいるだけで職場内の風通しの良さがこちらにも伝わってきます。


日々、クリニックを運営できるのは支えてくれる職員の方がいてこそ。


きっと、職員全員が医療現場で多くの人を支えたい、助けたいという思いで現在に至っていると思います。その気持ちを活かすためにも、ファシリテーションを利用してみてはいかがでしょうか。


院内で実施することが難しい場合、コンサルタントに依頼し、ファシリテーションを実施することもできます。クリニックの状況に応じ、第三者機関を利用し、その意見を参考にするのも良いかもしれません。