厚生労働省より、平成25年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」が公表されました。これは、過重な仕事が原因で発生した脳・心臓疾患や、業務に起因する強いストレスなどが原因で発病した精神障害の状況について、労災請求件数や労災保険給付を決定した支給決定件数などを年1回公表しているものです。
そのデータによると、精神障害の労災請求件数は過去最多の1,409件であったこと、その業種別(大分類)の内訳で、「医療・福祉」紹介が219件で2番目に多いという結果となっています。中分類で見ると、「医療・福祉」の「社会保険・社会福祉・介護事業」が請求件数119件、支給決定件数32件となり、共に最多となっています。
また、労働安全衛生法も改正が行われ、50人以上の事業所について「労働者の心理的な負担の程度を把握するための医師、保健師等による検査(ストレスチェック)」の実施義務が課せられることとなりました。(50人未満の事業所については当分の間努力義務)
医療現場の職員は毎日患者様と接するため、知らず知らずのうちにストレスを溜めがちです。特に、「人を助けたい」といった志を持って入職する真面目な方が多いため、理想と現実のギャップに悩み、心身の健康を損ねてしまうケースもあります。
患者様をお迎えするためには職員が心身ともに健康であることが必須となります。接遇の質を維持するためにも、職員のメンタルケアは重要な課題と言えます。
本日はメンタルヘルスについてお話をしたいと思います。
・メンタルヘルスの基本
メンタルヘルスとは、「こころの健康」のことを指します。それがいきいきと自分らしく生きるための重要な条件が満たされている状態であればその心は健康な状態だと言えます。
その条件とは以下の4点です。
1. 情緒的健康…自分の感情に気づいて表現できる
2. 知的健康 …状況に応じて適切に考え、現実的な問題解決ができる
3. 社会的健康…他人や社会と建設的でよい関係を築ける
4. 人間的健康…人生の目的や意義を見出し、主体的に人生を選択する
・うつ病は予防可能なのか
予防できないとは言い切ることは出来ませんが、簡単に実施する事は難しいと言えます。理由としては、
1. 誰しも自分がうつ病になるとは思っていない
2. 自分自身も周囲も気づかない
3. 気づかないので病院に行かない
4. 発症を未然に防ぐためには、その原因が仕事や上司にある場合、辞めるしかない
職員がうつ病を発症した場合、原因は組織(仕事)に起因している以上、組織が主体的に取り組まない限り発症を防ぐことは出来ません。職員が健康で活き活きと働ける環境を作るためにも、医療機関側の主体的な動きが必要不可欠となります。
つまり、予防をするためには、職員自身が行うセルフケア、組織が主体的に行うラインケアを併せて行うことが求められます。
・セルフケア ストレスの対処法
自分自身でストレスに対するケアを行うことを「セルフケア」と言います。
そもそもストレスとは3つの段階で構成されています。
第一段階:警告期 多くの人は自覚症状を感じない。
第二段階:抵抗期 警告期が続き、ストレスに対する抵抗力が低下している時期。
疲労感が興奮に変わり、徹夜続きでも無理をしてしまう。脱力感や体の不調が継続的になってしまうこともある。
第三段階:疲弊期 疲れきって本格的な病気に移行する時期。
解消できないままストレス状態が続き抵抗期を過ぎると、今度は抵抗期の無理がたたって体がダウンしてしまう。もう自分ではどうしようもなくなり、本当の病気に移行してしまう。
セルフケアでは自分にかかっているストレスを認識しつつ、対処する必要があります。
対処法としてはストレスコーピングなどが有効です。
・ラインケア メンタルヘルス不調の早期発見
組織としてのメンタルヘルスケアとしては、「職員」「職場環境」の二方向で対策を取ります。前者ではストレスチェックの実施、上司や産業医による相談対応が挙げられ、後者では労働時間の適切な管理、職場内でのパワハラ・セクハラ等への対策等が挙げられます。
また、所属長に限らず、職員からの報告・相談の体制を整えておくことも有効でしょう。場合によっては上司より、同僚という関係の方が変化に気づきやすいと言えるからです。
医療業界は他者を助ける仕事です。他者を助ける仕事ではなによりも自分の心身が健康でなければなりません。いくら接遇研修を受講し、接遇の知識を身につけても、自身が健康を損なってしまっては何の意味もありません。
これからはセルフケアだけでなく、組織一体となってメンタルヘルスに対する対策をとることが求められるでしょう。状況に応じ社会保険労務士、臨床心理士などの専門家のコンサルティングを活用することも良いと思います。病院職員にとって働きやすい環境を整え、いつも安定した接遇で患者様をお迎えできるようにしましょう。