■人材育成費が厳しい時代
物をつくれば売れた右肩上がりの成長時代は終焉をむかえ、世の中は物が売れない時代へと突入しました。 この流れは医療業界においても例外ではありません。
競合の乱立や医療費削減による診療報酬の見直し、看護師等の深刻な人材不足などで、
多くの医療機関は経営難に陥っています。
そのような流れの中で、職員の育成や能力開発にかける費用も厳しい状況です。
■よりシビアに成果が求められる人材育成
現在の風潮としては民間企業にも同じことが言えるのですが、教育費を投資しただけの成果や効果、いわゆるROI (return on investment)が重視されています。
ですから、短期的な教育研修で「成果」が求められるのです。しかし、ここに人材育成の大きな落とし穴があるのです。
今回の事例は、まさに職員の育成を短期的にとらえてしまったことによる失敗談です。
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(事例) 職員育成計画の失敗
開業5年目のクリニック。
経営はなんとか軌道にのり始める中、
院長は今後のクリニックの発展に必要なものは「人財」と考え、人材教育の手法について学び始めました。
そして、外部セミナーや講師を招いての半年近くの研修計画をつくりました。
研修計画がスタートし、スタッフも休日返上でセミナー参加や社内勉強会の準備に追われました。
それから月日は流れ、開始から6ヶ月が経過しました。
院長の当初のシナリオでは、この半年の研修により、スタッフの劇的な変化を期待していたのですが、何ら変わりのない様子を見て、院長の人材教育に対するモチベーションはすっかり下がってしまったのです。
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(事例検証)なぜスタッフは変わらなかったのか?
シビアに「成果」を追求する近年、教育研修に過剰に期待するあまり、受講者に短期間で過度な行動変化を求めてしまう傾向があります。多くの研修において、
受講者は一時的には行動変化を起こすものの、本質的な変化には至らず、元の状態に戻ってしまいます。
ですから、結果として教育研修のROI は経営者層の期待に応えられず、教育予算の削減という悪循環に陥ってしまうわけです。
■ 研修に期待できる効果は人材育成のうち何%?
では、このような職員研修には、一体どれだけ効果があると思いますか?
これはあくまで一般的な話になりますが、人材の育成を全部で100%とすると、次のように言われています。
研修でカバーできる部分は・・・・10%
仕事を通じて学ぶOJT・・・70%
自己啓発・・・・・・・・・・20%
この数字を見て、皆さんはどう感じますか?
「たった10%…!?」と思う方、「10%もあるのか…」、と思う方。
たぶん、前者が多いでしょうか。
ですが、私は後者です。
1年365日のうち、研修を受ける日数はせいぜい数日、多くても一週間くらいではないでしょうか。
それにもかかわらず、人材育成全体の1割をカバーできるということは、教育研修のROIが見かけによらず高いことを示しています。
では次にこの10%以外の部分を見てください。
仕事を通じて学ぶOJT・・・70%
自己啓発・・・・・・・・・・20%
実は、あえてこの数字を「一般論」として位置づけたのは、この90%の部分に関しても、研修で大幅に質を高めることができるからなのです。
■ 研修の効果を高めるには?
それでは研修の質、つまり研修効果を高めるには、具体的にどのようにすればいいのでしょうか。
重要なキーワードは、研修の「対象」と「目的」です。
皆さんは研修を計画する際、テーマ設定はどのようにして決めていますか?
例えば効果の70%を占めるOJTにおいて、「若手職員の成長が遅い」という問題意識がある場合、「じゃあスタッフ全員を対象とした研修だ」と何となく決めていませんか?(←実際の病院名は出しませんが、実例です)
しかし、これでは期待するほどの研修の効果は得られません。なぜなら、背後に「先輩スタッフの指導方法が悪い」という問題点があることを見逃しているからです。
全スタッフを対象とすれば、それだけ焦点もぼやけてしまいますし、一般的な内容になってしまいます。
つまり、何を言いたいかというと、研修はやり方次第では、非常に効果があるということ。
そして、そのやり方の重要なポイントになるのは、「研修の対象と目的」を明確にすることなのです。
これを曖昧にしてしまうと、闇雲にスタッフ全員を対象とした研修を行ってしまいがちです。
しかし上の例であれば、対象をリーダー的役割を担うスタッフに絞った「指導力向上」が目的の研修を行うべきなのです。
だから、成果・効果が出ないのです。
ただ、何となく行う研修はしない!
目的となる課題をはっきりさせ、その課題を解決するために研修を行う!
これが、シンプルではありますが、最も成果・効果が出る研修実施に至るまでのプロセスです。